佐々木隆博にとっては、これ以上は望めないほど絶好のタイミングだった。全国的に民主が苦戦するなか、前月の旭川市長選で勝利したばかりの西川将人市長から応援を受け、当初劣勢と見られていた衆院選でも2847票差で勝利し、2年ぶりに国会の議席を奪還した。
西川が全面支援
2012年冬の記録的な惨敗から約2年。民主党の党勢はまだ回復していない。西川も「民主党」の3文字がブレーキになると懸念したのか、自らの選挙では民主色を薄めた。このため解散が伝えられたころ、佐々木陣営内では「情勢は厳しいので応援してもらいたいが、市長には市長の事情があるし…」と懸念する声も。西川後援会の杉山正幸会長も「我々は市民党ですから」と、応援に慎重な姿勢を示していた。
ところが、公示のあとは西川の積極的な姿勢が目立った。公示後の第一声や12月3日の旭川ブロック個人演説会でマイクを握ったのを皮切りに、5~6日、12~13日にかけて市内各地で開かれた個人演説会にも12回参加。選挙戦最終日の13日には本隊車(選挙カー)に乗り込んで、佐々木と並んで10ヵ所以上で街頭演説した。西川後援会幹事長の板井清春も、本隊車で連日マイクを握り、ほかにスタッフ数人が佐々木選対で選挙活動を支えるなど、組織ぐるみで佐々木を支えた。
民主はともかく佐々木は応援
今回の選挙で、佐々木陣営は公示前に士別、名寄、富良野をほぼ回り終え、公示後は旭川で活動する戦略をとった。大規模な集会も開いたが、中心は個人宅、住民センター「高齢者憩いの家」など小規模な会場で開く個人演説会。佐々木は民主党きっての農業通だが、旭川市民に対してはアベノミクスの問題点、集団的自衛権など、都市部住民が関心をもつ話題を選んで語りかけた。
2012年の落選から、6区内で支持団体や有権者との対話を重ねてきた佐々木は、逆風が弱まっていることを感じていた。「選挙戦のあとも、訪れる先々で厳しい言葉を投げかけられたが、今回は温かく迎えていただけた」(陣営の関係者)
農政ネットワークの関係者も、風向きの変化を指摘する。「佐々木がTPP交渉を断固阻止することを明確にしてくれた。民主党はともかく、佐々木を応援する方向で上川全体の組織がまとまった」
選挙期間中、道6区での接戦が伝えられると、自民党は今津の応援のため安倍首相、菅官房長官、谷垣幹事長などの大物を送り込んだ。民主党からも海江田代表、福山政調会長などが来旭したが、知名度や人気の差は歴然としている。それでも佐々木陣営は気にしていなかった。市長選でも自民党が大物議員を呼んだのに、明確な効果が見えなかったためだ。
この続きは月刊北海道経済2015年1月号でお読みください。