コロナでも富良野の高級不動産堅調

本誌でも過去に何度か伝えている通り、外国の富裕層が富良野地区の不動産に注目している。ニセコで多くの物件を販売した実績をもつ「H2グループ」は2017年に富良野支店を開設し、高級コンドミニアムを販売してきた。コロナ禍のために海外バイヤーの来日は途絶えたが、ネットのライブ中継で物件の特徴を伝え、富裕層との商談を成立させているという。

北の峰通沿い
 富良野スキー場(北の峰ゾーン)のゴンドラ駅と道路を挟んで向かい合う現代的な外観の建物がある。「フェニックス・フラノ」と名付けられたコンドミニアムだ(2016年築)。プロジェクト管理を手掛けたのは虻田郡倶知安町に本社を置く北海道トラックスだ。
 このプロジェクトをきっかけに北海道トラックスは富良野支店を開設した。今年度に入って、同じくニセコを拠点に外国人向けの超ハイエンド向けホスピタリティを展開していた。ハクライフ社と合併してH2グループとなり、その富良野支店になった。
 現在、同社は北の峰通(道道800号)沿いで2棟のコンドミニアム「カク・プレイス」「フェニックス・ウェスト」を販売している。価格は未公表だが、安価な部屋でも数千万円に達する見通し。主に海外に住む富裕層にの販売する。その後は「フェニックス・イースト」の計画が控える。
 新築物件の場合、同社はプロジェクト管理を行いながら、デベロッパーと地元建設会社の仲介役を務め、完成後は販売、販売後は物件管理を担う。
 このほか、戸建ての既存住宅、ペンション、レストラン向けの物件なども仲介している。
 北海道トラックスの会社設立は2003年。以来、ニセコを中心に外国人向けの高級不動産を扱ってきた同社が富良野に進出した背景には、富良野の世界的な知名度上昇がある。

ダブルシーズン
 「富良野ではもともと外国からのツーリストが多かった。ラベンダー畑の風景、大雪山の眺望、チーズ工場やワイン工場などの魅力が知られていた。不動産についてもこの数年の間に、魅力が知られるようになった」と、セールス担当のスコット・トービー氏は指摘する。
 外国人が魅力を感じる道内の不動産の特徴は、まず近くにスキー場があること。それはニセコエリアに集中的な投資が行われた最大の理由でもある。もう一つ、富良野にはニセコにはない魅力が備わっているという。
 「富良野はダブルシーズン。冬でも夏でも遊べるので、賃貸物件は収益を上げやすい。それだけ付加価値がある。ニセコを楽しめるのは基本的に冬だけだ」(トービー氏)
 なお、一部にはニセコのブームが下火になったとの見方もあるが、富良野支店長の西本圭志氏は「ニセコでは依然として多くの不動産が取引されている」と語り、こうした見方を否定する。
 現在、H2グループの顧客は世界各国にいるが、中でも多いのは香港やシンガポール、フィリピンなど東南アジア各国、そして欧米諸国だ。なお、香港については政治的な混乱とは関係なく、以前から販売は好調だという。
 2019年まではこれらの国々からバイヤーが訪日、物件をその目で見て品定めした上で購入していたが、コロナ禍で国際的な人の流れがほぼ途絶え、販売のスタイルが変わった。海外からインターネットで寄せられる問い合わせに応じて、トービー氏がスマホを持って物件を訪れて、特定のバイヤー向けに「ライブビデオツアー」を開き、質問にもその場で答える。このほか、コンドミニアムなど新規プロジェクトの発表時には、複数のバイヤー向けに同時に中継することもある。
 バイヤーが物件を気に入れば、来日することなく商談が成立する。とはいっても、コロナ前までよく話題になっていた外国人富裕層の「爆買い」とは性格が異なると、西本氏は語る。「これまで築いてきた信頼関係の上で、登記などのしくみを十分に説明して、不動産取引リスクが低いことを納得してもらった上で購入してもらっている。気に入ったから即買い、というわけではない」
 昨年の春から夏にかけて、コロナの影響で世界中でビジネスが低調になった時期には道内不動産への購入意欲も低下したが、その後徐々に回復。すでにコロナ前の水準に戻っているという。
 新しい動きも生じている。それは、外国人だけでなく、日本人の富裕層への販売実績の増加。資産家が新たな投資先を求めていることと関係があるのかもしれない。

中古戸建も高価格
 H2グループのウェブページには、仲介している富良野市内の物件が価格付きで掲示されているのだが、数千万円以上の高級物件がずらりと並ぶなかで、目を引くのが1983年築の戸建て住宅だ。敷地面積229平米、床面積94平米の昭和の雰囲気漂うこの建物の価格は2980万円。トービー氏によれば、スキー場から歩いてすぐという立地条件に、外国人バイヤーなら2980万円の価値があると感じるとのこと。本能的に「高い」と感じた記者には、世界的な視野が欠けているのか。
 同社が取り扱う富良野地区の物件はスキー場の近くに限られていたが、徐々に富良野市街や中富良野へも広がってきており、物件の状況次第で美瑛や旭川にも拡大する可能性もあるという。
 日本人がニューヨークの一等地で高級不動産を買い漁ったのはバブル期の話。いまでは旭川からも近い富良野の不動産市場に外国から資金が流れ込んでいる。そのお金は土地を売った地主や建設会社を通じて地域社会へと流れ込む。富裕層の日本滞在中の消費活動にも期待が集まる。不況が長引くこの時代、「外貨」の流入は地域経済にとって数少ない明るい材料だ。

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この記事は月刊北海道経済2021年06月号に掲載されています。