機械の寿命伸ばす旭川自動車工業

 「部品がもう手に入らないから修理はできない。買い換えるしかないね」─そう宣告された自動車や建設機械、農業機械のユーザーに訪ねてもらいたい工場がある。旭川自動車工業㈱(古舘浩司社長、旭川市永山2条12丁目)はさまざまな手法を使って部品を加工、再生することで、買い替えるよりも大幅に低いコストでこうした車両や機械の修理を可能にしている。

あきらめかけたトラクター
 旭川近郊のあるベテラン農家には、数十年連れ添った「相棒」がいる。農作業のさまざまな場面で活躍するトラクターだ。高齢になるとともに自身の体は以前のようには力を出せなくなったが、トラクターはもはや手足の一部と化しており、自在に操作することができた。時代の変化とともにコンピューターや先進のメカを搭載した新機種が登場したが、長年慣れ親しんだ愛機に乗り続けた。
 しかし、人と同じように機械も年を取る。部品は少しずつ摩耗し、騒音や振動が生じるようになる。生産終了から長い時間が経つと、交換部品も入手できなくなる。重要な部品一つだけが確保できないため、機械全体を高いお金を払って買い換えなければならなくなることがよくある。この農家の場合、問題はより深刻だった。新型のトラクターの使い方を覚えて乗りこなす自信はなく、部品が入手できないために農業を引退することも考えた。
 こうした状況に陥った車両や機械のユーザーが頼りにするのが旭川自動車工業だ。エンジンの内部構造を熟知する技術者がエンジンを開き、故障の原因を探る。水圧試験・亀裂点検などで異状がないか調べることもある。数十年の経験をもつベテラン技術者は、状況を聞いただけで要因がいくつか頭に浮かぶという。
 たとえば、長年の使用で回転軸を支える部品が摩耗し、ガタガタになっているとしよう。比較的新しい機種なら、同じ部品を入手して交換するのが一般的な手法。もう部品の生産が中止されており、入手できない場合、この工場で活用するのが「肉盛り」や「溶射」と呼ばれる手法。減った部分に金属を溶接して文字通り盛り上げる。その部分を研磨して滑らかにすることで、再び回転軸は滑らかに動くようになる。こうした技術を活用して修理された旧型のトラクターは以前のような動きを取り戻し、いまもベテラン農家に操られ畑で活躍している。

油圧ホースを迅速に製作
 トラクター、建機に欠かせない修理といえば油圧シリンダーのオーバーホール。老朽化した油圧シリンダをそのまま使っていれば油が漏れてくることもあるが、田畑では絶対にあってはならないことだ。このためシリンダー修理の依頼は年間400~600件に達する。
 他にもオリジナルの部品と同じものを旋盤で再度製作するなどしている。現代の産業は大量生産技術によって支えられているが、その対極にある「一つだけ」の部品の確保が、機械の寿命を延ばすのに役立っている。
 旭川自動車工業の守備範囲は幅広い。冒頭の事例で紹介した農業機械のほか、トラックなど大型運輸機械、ショベルドーザーなど建設機械のエンジン修理(内燃機加工)が主な事業。販売価格が数百~数千万円に達するこれらの機械については、エンジンを丸ごと交換するよりも、エンジン内部の部品を修理・製造したほうがはるかに安上がりというコスト面の要因も、旭川自動車工業に多くの相談や注文が寄せられる理由となっている。記者が取材に訪れた日には、大型バイク「ハーレーダビッドソン」のユーザーから託されたシリンダ・ブロックが修理を待っていた。
 ブリヂストンのホース認定工場として営むもう一つの主要な事業が、建設機械などに使用される油圧ホースの製造と販売だ。強大な力をきめ細かくコントロールする油圧装置のいわば「血管」の役割を果たすのが油圧ホース。日々高い圧力がかかりながらも柔軟に動く油圧ホースが故障すると、機械は動かない。工場内には道内随一の品ぞろえを誇る多彩な部品がそろっており、オリジナルのパイプ製作や油圧機器の販売も行っている。
 冬の暮らしはホイールローダーをはじめとする建設機械なしでは成り立たない。油圧ホースの故障は除雪作業の遅れを招く。旭川自動車工業ではユーザーからの要望に応じて迅速に油圧ホースを制作し、間接的に冬の市民生活を支えている。

廃車決める前に相談を
 創業は1963年。当初は大型自動車の整備工場を4条通18丁目で開いていたが、その後永山3条10丁目に移転。2023年5月、創業60年の節目に合わせて現在の永山2条12丁目に移った。
 「壊れたらすぐ買い替える」といった風潮が社会に広がったいま、旭川自動車工業のような姿勢で修理に取り組む事業者は少ない。しかし「部品さえあればまだ使えるのに」「愛着のある機械をこれからも使いたい」といった思いを抱いているユーザーも多い。「廃車を決める前に、まずは当社までご相談ください」と、古舘社長は語る。

 旭川自動車工業のウェブページはこちら

この記事は月刊北海道経済2025年10月号に掲載されています。
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