「日本の極み果実」と称して、全国の産地から厳選した旬のフルーツを800種以上取り寄せる旭川市の「やおもり果実専門店」(緑が丘)。その店主が〝果実界のさかなクン〟こと、森大介さん。それではなぜ、彼が果実専門店を営むことにしたのか。そしてコンセプトに掲げるものとは一体?(文中敬称略)

なぜ、果実専門店を? 何が基本コンセプト?
果実というのは季節性が強く、嗜好品のような見方をされる時がある。そのせいか、大手百貨店などで贈答品として扱われるケースも多い。だが、大手百貨店が姿を消した旭川市内には、贈答用に適した果実を購入できる店舗がごく少なくなってしまった。それに「旭川には果実に特化したお店がなく、人に果実を贈る文化が廃れてきている」。実際、「お中元やお歳暮の文化の引き継ぎがなされなくなってきた」ことも日増しに実感している。
さらに言えば、「本州と同じスピードで旬の果実を販売できるお店がなく白菜・キャベツ・大根・ほうれん草といった定番野菜は、スーパーで買うのが一番鮮度も良くポイントも付き、まとめ買いもできて安い」。そのため自店で行うことに意義を見出せず、メリットさえ感じきれなくなってしまった。他店やスーパーに見られない果実を扱っていること自体、強みではなく、あくまでも「旬の果実の最高峰を楽しめる果実を販売しています」。
その上で森が基本的なコンセプトとして掲げているのが、まず、第一に「果実が好きな方のお店であること」。そもそも、果実というのは嗜好品としても分類されることが多いが、「美味しい果実が食べたい。年に一回だけでも、自分が好きな果実を食べたい、贈りたいという方が利用するお店」。とりわけ旬の時期が短い果実だからこそ〝ベストなタイミング〟を逃さず「旬の時期を大切にすることで、より『季節感』と『限定感』を楽しんでいただきたいのです」。
そんな「やおもり果実専門店」が目指す方向は「所得はそれぞれでも、衣食住の消費とちょっと離れた嗜好品とも言える果実が持つ特別な価値にこそ、それ相応の対価を払っていただける方々の満足度に〝刺さるお店〟であることなのです」。

価値観を共有し合える生産者と妥協なき連携
ところで、日本の文化とも言えるテレビアニメの長寿番組「サザエさん」のオープニングで季節の果実が画面を飾っているのも風情があっていい。こうした季節を代表する風物詩としても価値ある存在が果実で、これからクリスマス、さらに年末年始と旬の果実が登場し師走を彩る。ここ最近のクリスマスでは、ケーキよりシャインマスカットなどの果実を好む人も。冷蔵や貯蔵技術の更なる進化に伴って賞味期限も日々延びているという。
やおもり果実専門店の強みは独自ルートで仕入れる旬の果実の多様さ。さらに「本当に美味しいものを、価値観を共有し合える生産者」との妥協のない連携とも言える。これらの産地や生産者については本誌でも何度か触れた。芳醇な香りで、とろけるような食感に、通の舌先をとらえて離さないメロン。プレミアムの適期を見極める技術や出来栄えを左右するのも作り手しだいとなる。
比較的食べごろが続き贈り物やお供え用として人気がある果実に対する工夫と配慮にも作り手の感性と判断が試される。こうして個人ブランドの確立に心血を注ぐ生産者たちに森はリスペクト。「夢でも幻でもなければ現実世界の極み果実」と称賛してやまない。
やおもり果実専門店は信頼できる市場担当者と連携し、全国各地に点在する生産者から自ら味を確認し取り入れ、季節に応じた商品ラインナップを組み、作り手の思いを代弁しながら果実ごとの個性を引き出している。昭和レトロな雰囲気を漂わせながら、ひっそりとたたずむ高級果実専門店の商品棚には、季節に応じた〝スペシャル感〟満載の果実が並ぶ。その目利きが問われる場面もしばしばあり、シャインマスカットのおいしさを見極める秘策もある。
果実界のさかなクンが信頼を置く生産者は目先の利益にとらわれない。理想の果実づくりに極端なまでに心血を注ぐことから親しみを込め「変態」と呼び、さかなクン自身「変態」を自称。ともに似たもの同士を自認しているが〝果実道〟の本質は険しく、容易なものではない。それでも、日本の極み果実の価値を理解してもらえる顧客の思いに応え、突き進む。
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