士別サムライブレイズ「武士道不条理物語」

 純粋で、殿様のためには命を惜しまず、信義、勇気、礼節、名誉、名誉を貴ぶ─こうした武士道精神が、身分制がなくなったはずの現代でも好意的に評価されることがある。もちろん武士道には残酷な面、不条理な面もあった。戦国時代から現代社会まで前後七代にわたる武士階級の家が、不条理や残酷さに翻弄される様子を描いた映画が「武士道残酷物語」だ。一方、2025年の道北にも、「士」を名前に関した野球チームがある。北海道フロンティアリーグに所属するKAMIKAWA士別サムライブレイズ(以下、略称のSBで表記。運営会社は志BETSホールディングス)。サムライブレイズとは武士の太刀を意味する言葉だ。士別が、同じ読みの標津と区別するため「サムライ士別」と呼ばれることがあることにかけた名称だが、選手たちはサムライではない。ある時は働き、ある時は野球の練習に汗を流し、試合ではボールを追いかけて躍動するのだが、実はチームの内部では武家社会顔負けの不条理な行為が行われているとの情報を入手した。

2022年の入団発表

地域で最も立派
 SBの元関係者から記者に提供された2枚の写真。チームのスタッフと選手が参加するLINEのグループでのやりとりを一部切り取ったものだ。うち1枚では全裸の男が背後の家具らしきものに向かってもたれかかり、笑顔は浮かべているものの、酒に酔っているのか視線が定まっていない。この写真には男の局部がはっきりと映っている。もう1枚は同じ人物かどうかは不明なのだが、うつぶせになって尻をカメラに向けている。
 その下に、グループに参加している別の人物の発言がある。「〇〇〇〇、黒歴史確定です」。〇〇〇〇は2022年シーズンまでSBに所属していた選手の名前だ。
 この写真をLINEを通じてアップロードして、グループの他の関係者にも見える状態にしたのはH氏。SBのチーム運営責任者だ。本誌は過去に何度か、別の記者を通じてSBに取材し、その戦いぶりや社会貢献などを記事にしている。子どもたちを集めて開く野球教室などで社会に貢献しているチームの内部はどうなっているのか。驚いた記者はこの行為や後述する一連の問題について尋ねるため、FAXでチームの菅原代表に連絡を取った。菅原代表は、記者が以前担当していた記者を通じて連絡せず、FAXで生々しい内容を含む質問を送り付けたことに抗議したものの、9月3日にSBの母体であり、菅原代表が社長を務める㈱イトイ産業の本社(士別市朝日町)で取材することになった。
 2005年に士別市と合併してその一部(合併特例区)となった朝日町。イトイグループの所在地はカーナビに頼らなくてもすぐわかる。朝日町の中心部から士別市に向かって進み始め、左手にすぐ見えてくる豪勢な建物がそれだ。建物の前には本体のイトイ産業のほか、グループを形成する各社の名前がいくつも並んでいる。

懲罰ではない
 菅原代表との取材は、冷静かつ淡々と進んだ。問題の2件の画像について、菅原代表は説明する。
「22年のシーズン終了後、ジンギスカンを食べながらの飲み会となり、酔った選手が自発的に脱いだのを周囲にいた人間がスマホで撮影した」
 若者の選手同士でこうしたやりとりがあるうるのは理解できる。撮った方も撮られた方も気にしていないなら、目くじらを立てるほどのことはないかもしれない。しかし、この写真をアップロードしてグループ内で見えるようにしたのは運営責任者のH氏(菅原代表のいとこ)だった。
 「運営責任者として言語道断。指導する側の人間なのにありえない。私から指導した」(菅原代表)
 SBではシーズン入りの時期にコンプライアンス研修が行われ、SNSの使い方も研修対象になっているというが、選手の中には、率先して猥雑な写真をアップロードしたスタッフのいるチームが、選手たちにSNSの使い方を教えることに失笑する人もいるという。
 なお、本誌には写真を撮られた選手が反抗的だったので、H氏が懲罰の意味を込めて写真を撮ったとの指摘もあったが、菅原代表は、映っている選手とは退団後もLINEをやりとりする良好な関係であり、懲罰の意味合いはないと強調した。

唐突な監督交代劇
 本誌に寄せられたもののなかには、選手の行状に関するものもあった。選手の飲酒運転がチーム内で発覚した。車載ドライブレコーダに残る音声からは、この選手が同乗していた選手を脅し、飲酒運転を誰にも言わないよう命じていたこともわかった。この選手は家賃の滞納や仕事への遅刻などの行状のためにシーズン途中で退団したのだが、チームが飲酒運転をどこまでとがめたかどうかは不明なままだ。
 SBについて取材をする過程で、球団スタッフへの不満を語る元関係者がいる一方で、(監督などの)「指導者にはお世話になった。感謝している」といった声を聞いた。しかしこれまでの指導者の中には資質が疑問視される人もいる。今季からSBの監督を務めているのは、阪急、阪神、日本ハムなどでプレーし、ロッテ、楽天、などでコーチを務めた経験を持つ本西厚博氏。昨年11月に本西氏との契約が発表される約1ヵ月前、前監督の退任をめぐって不自然な動きがあった。「当初監督との契約は2年契約と発表していましたが、来期編成についての会議の中で監督から指摘があり、実際の契約期間は2024年1月1日から10月30日までの1年契約である事が判明しました」(昨年10月3日のSBからの公式発表)というのである。
 チームの元関係者が本誌に語る。「練習中に前監督の言動が原因でパニック障害を発症した選手がいた」
 前監督が辞任した経緯について、菅原代表は率直に説明した。「選手らから聞き取りを行い、前監督の言動に問題があったことや他の問題を確認し、指導と50%減給の処分を行い、退団となった。これまで公表してこなかったがHFLリーグには報告している」

請求の名目は?
 より根深い問題がチームに存在することを浮き彫りにしたのが、現金のやりとりをめぐる元選手との対立だ。
 22年、23年シーズン、SBに選手として所属したA氏の話。「24年もSBで野球をするつもりだったが、体調が思わしくなく、士別でプレーすることができなかった。結局、寮では1日も生活しておらず、食事もとっていない。私は24年シーズンについては球団と契約を結んでいない。しかしH氏が、『契約書は送った。24年も契約済』と譲らず、27万円を支払うよう何度も求められ、払うしかなかった。契約書は届いていないから、サインもしていない。請求はすべて電話での口頭によるもの。LINEの(文字に残る)メッセージやメールなどは一度もない。領収書ももらっていない」
 A氏の言う通りなら、球団の姿勢はあまりに強引だ。直接取材で菅原代表に問うと、確認して後日回答するとのこと。数日後、以下のメールが来た(大意)。
▽2024年の契約書を球団からA氏本人宛に郵送したが、返送はされていない。このため契約は成立していない。
▽A氏が在籍していた22~23年に滞納していた寮費として25万位をH氏が事務所か寮か食堂にて受け取ったとの報告があった。日時は覚えていないとのこと。契約不履行による違約金ではない。
▽金額の授受について、受け取ってはいないという報告をH氏から受けた。会社で入金記録を調べたがそのような入金はなかった。
▽A氏の未納分の寮費は23年の16万4000円は確認済。これについて支払いがあった事実は確認できていない。22年の未納分の寮費は現在調査中だが、手元に管理記録がまだ見つかっていない。
 A氏は真向から反論する。
「22年に滞納があったのは事実だが、シーズンオフにすべて払った。23年目のうち未納だったのは10月分だけ。残りについては、24年シーズンの分だとH氏にはっきりと言われた」。繰り返すが、24年シーズンについて契約は成立していないことを、現時点では菅原代表が認めている。
 A氏の主張が正しいのか、H氏が菅原代表に行った説明が正しいのか、断定するには証拠が足りない。お金の名目を示す請求書が球団から発行されていない(請求はすべて通話で行われ、メールやLINEの文字によるメッセージ機能などには、H氏の発言が残っていない)。領収書もない。一般的に企業では現金の取り扱いに注意を払い、現金出納帳にいつ誰からどんな名目で現金を受領したのかを逐一記録し、不正やミスを防ぐものだが、SBではそういった体制が整っていなかった模様。さらに奇妙なのが、H氏が銀行振り込みではなく、現金での支払いを求めていたと複数の元選手が証言しているということだ。企業で現金の扱いに関わった経験のある人なら、不自然さを感じるだろう。このような体制では適切な管理も、不正防止も、帳簿の記録も、税務申告もできない。どちらの主張が正しいのかという疑問とは別の疑問が浮かぶ─この球団のガバナンスはいったいどうなっているのか?

「経理業務が未熟」
 菅原代表も、現時点では従来の体制に問題があったことを認識しているようだ。記者が送った再度の質問と、菅原代表からの回答は以下の通り。
─なぜ請求書、領収書の発行、銀行振り込みなど、一般的な方法で現金の授受を行わなかったのか。
菅原 経理業務が未熟だったため。(球団を運営するグループ会社)志BETSホールディングスの野球事業では、経理業務を実務者スタッフが担っており、スタッフへの指導や仕組みづくりが至っていなかった。現在は、現金での授受について領収証を全て発行している。
─菅原代表や(グループ中核企業の)イトイ産業の担当者は、球団スタッフに現金授受の方法を教えたのか。
菅原 野球事業はイトイ産業の事業ではない。担当者は志BETSの社員。私自身も経理についての知識が浅いため、イトイグループHDの総務部にアドバイスをしてもらいながら、社員が業務を進めてきた。現金の取り扱いは現場での現金は志BETSの社員が、銀行への振り込みや引き出しは総務部の担当が行っている。私は決裁者として、出金(備品の購入など)の際に決裁をしているが、入金については一任しており、寮費の未納額についても、今回初めて実態を把握した。こちらの指導についても、現場に任せきらず私自身が社員と一緒に学び管理すべきだった。
─写真の一件といい、A氏との対立といい、H氏にチームの運営責任者を任せたのは問題があったのではないか。
菅原 私の指導と管理不足によるものだ。

まちの自慢になるか
 本誌は、SBの活動を1から10まですべて否定しているのではない。士別市朝日町という山間部のまちを盛り上げる活動や、子どもたちへの指導は意義深く、なにより今シーズンも多くの若者や青年が将来のNPBや大リーグ入りを夢見ながら士別でプレーしている。地域社会での働き手の確保という面からの貢献も見逃せない。
 しかし、菅原代表が認めるように、これまでの管理体制に問題があったのは明らか。そのために傷ついたり、不愉快な思いをしてチームを離れていった選手がいるのも事実だ(菅原代表は「後片付けに4日がかかるほど寮を汚していった人もいた」など、一部選手のモラルの低さを指摘した)。
 朝日町地区から約20キロ離れた士別市の中心街でも、チームの名前が大きく記されたのぼりをあちこちで見かける。今シーズン、SBはHFLリーグの4チーム中3位。相手チームがいる以上、試合で勝つこともあれば負けることもあるが、コンプライアンスやガバナンスのために士別の評判を落とすことがあってはならない。

この記事は月刊北海道経済2025年10月号に掲載されています。
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