新市庁舎建設に組み入れる格好で大改修から一転、建て替え計画が浮上した旭川市民文化会館。巨額な事業費などを巡って市議会の論戦の的となっているが……
基本設計で凍結
大ホール、小ホールなど合わせて年間16万人以上の利用がある市民文化会館は、開館後40年以上が経過したため、屋上防水や外壁の劣化による雨漏りや配管設備の漏水などが発生。空調施設なども老朽化していた。また、ホールの座席のほか、壁や床などの内装材など建物全体の劣化が著しいのが実態。さらに車椅子への対応やエレベーターの設置など、現行のバリアフリー基準に不適合であるなど、利用者ニーズに応え切れていない部分が多々ある。このため、旭川市では2年前、2403万円の予算を付けて調査し「大規模改修基本計画書」を策定した。
それによると、大規模な改修計画の一環として、耐震基準を満たしていない箇所の改修、建物の屋上防水、外壁の改修、トイレの増設などが盛り込まれた。ほかにも、ホール客席に車椅子対応席を新たに整備するほか、ロッカースペースの新設、授乳室など乳幼児を受け入れるために必要な機能の拡充、トイレの洋式化なども追加された。
これらの改修にかかわる経費を市では約24億円と試算した。しかし再度、老朽化した設備の改修や利便性を考えたエレベータの増設などを考慮して工事費を算出したところ35億円にまで膨らむことが明らかになった。さらに耐震改修に関わる追加費用や建設資材の高騰などもあり、再度検討することを決めた。
その結果、基本計画・基本設計を策定した後は、実施設計へと移行する〝常道〟を外れ、今年度に予定していた実施設計を行わず、当面は修繕で延命化を進める方針に転換した。
ところが、今年5月末に市がまとめた「新庁舎建設基本計画骨子」の中で市民文化会館建て替えの方針が打ち出された。
2403万円かけて基本設計を行った事業を、一時保留とするのならまだしも、基本設計を反故にして建て替えるというのは乱暴な話だ。
この続きは月刊北海道経済2016年11月号でお読みください。