「酔っ払ってると思って、いい加減にしてんだろ」「人をおちょくってんのか」「黙ってんじゃねぇ、ふざけんなお前!」─防犯カメラがとらえた映像には、運転手に怒鳴りちらし、運転席と後部座席を隔てる防犯ボードを蹴って破壊する男のあきれた行状が生々しく記録されていた。この男は札幌弁護士会に所属する杉山央弁護士。本誌は旭川地裁の法廷でこの弁護士と対決し、「絶叫男」の横顔を垣間見ていた。(文中敬称略)
豊田元代議士に続く絶叫事件
この事件が札幌市の中心部で発生したのは11月6日深夜11時ごろのこと。10日ごろから事件が映像とともにテレビで取り上げられ、週末には全国放送の情報番組でも繰り返し放送された。車内での暴力といえば、「違うだろー」と秘書に対して絶叫する衆院議員・豊田真由子(当時。17年10月の総選挙で落選)のあきれた行状が注目を集めたばかり。札幌の事件は音声だけでなく映像もあり、ひときわショッキングだった。
映像に記録された会話を確認すると、乗客の男は札幌のすすきのでタクシーに乗り込んだ後、「北3東7」と行き先を伝えた。運転手は「北3東7」と復唱した上で目的地に車を走らせた。ところがしばらくして乗客は「北3東5ですけど、この道でいいんですか」と指摘。運転手が「北3東5ですか。すいません」と言うと、乗客はやや怒った口調で「こんな道通らないですよね」と追及。運転手は「東7だと思って」と釈明したが、乗客は「東7でもこの道通んないと思いますよ。なんですかこの道」とヒートアップ。そして突然、怒りが沸点に達したかのように「おい」と叫んだかと思うと、「酔っ払ってると思って、いい加減にしてんだろ」「人をおちょくってんのか」などと叫びながら、防犯ボードを20回以上蹴って破壊した。運転手に停車を命じた乗客は「こんなカスに金ないわ」と言い捨てて料金を払わずに車を降りた。それでも怒りが収まらないのか、タクシーの車載カメラには乗客が持っていたスマホをタクシーに向けて投げつける姿さえとらえられている。
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タクシーの車内に設置された防犯ボードについては、客を犯罪者予備軍として扱うものであり、犯罪が多発する国ならともかく、治安の良い日本で設置の必要がないとの声もあるが、今回の事件を見る限り、防犯ボードが運転手の安全を守ったことは間違いない。この事件の映像をテレビで見たという旭川市内のタクシー運転手は「私も一度だけ、後ろから防犯ボードを蹴られた経験がある。万一のため、こうした備えは必要だ」と苦々しい口調で語る。
この続きは月刊北海道経済2018年1月号でお読み下さい。