あなたも市議選に出てみませんか

市議会議員選挙で新人候補がなかなか出てこない理由の一つに「選挙にはお金がかかる」ことがあるのではないか。しかし候補者には様々な公的資金援助がある。これを知っておけば「よし、私も出てみようか」という気持ちになる人がいるかもしれない。近づく旭川市議選は今のところ定数(34人)をどうにか満たす程度の立起予定者しかいない。「市議選に出てみようか」と考えている人たちのために「候補者となるための手引き」を紹介する。これを読んで、あなたも立起してみませんか?

出馬は25歳以上 供託金は30万円
 旭川市議選に出馬するためには市内に3ヵ月以上在住し、投票日までに満25歳に達しているという、最低2つの条件を満たしていなければならない。これをクリアーできれば、年齢に上限はないし、身体的障害があっても大丈夫。
 ただし、何らかの刑の執行中の人や、公務員は現職のままでは立候補できないなどといった、いくつかの〝欠格事項〟もある。しかし一般的にはこれらに該当する人は少ないので、25歳以上の旭川市民なら誰でも候補者になれると考えてもいいだろう。
 立候補の届出を行うためには各種書類が必要となるが(後述する)、それ以前にまずは何を置いてもお金を用意しなければならない。いわゆる「供託金」と呼ばれるもので、市議選の場合は30万円(道議は60万円、市長は100万円)。
 この30万円は〝冷やかし立候補〟を自重させる意味合いを持つもので、旭川市議選の場合、有効投票者数を定数(34)で割り、その10分の1に満たない得票だと没収され、それを超えると返還される。例えば当日の有効投票者数が前回並みの約13万人だったとすれば、約380票以上取っていなければ没収される。ちなみに前回は40人の候補者全員が供託金を返還されている。
 さて、候補者となるためには選挙の告示日(午前8時半~午後5時)に文書で選挙管理委員会(選挙長)に届け出ることが必要。届出会場は前回の場合、午前9時半までは市民文化会館大会議室、それ以降は選管事務局。また、届出の前に午前7時40分から届出順位の抽選がある。
 届け出に必要な書類がいくつかあり、政党など政治団体の推薦(公認)を受けないで出馬する「本人届出」と、推薦などを受けて出馬する「推薦届出」とでは用意するものは若干違うが、どちらにも必ず必要なのは戸籍謄本(抄本)、宣誓書、経歴書、それに供託証明書。推薦届出の場合はこのほかに「所属党派証明書」などが必要となる。
 これらのことは事前に行われる候補者説明会で詳しく説明される。今回の市議選・道議選の説明会は2月26日開催が予定されている。

クルマ・ハガキ・ポスターは公費負担
 届出を済ませ立候補者になると、いわゆる選挙の7つ道具と言われる物品や書類を受け取る。選挙カーや拡声器の表示板、運動員の腕章、街頭演説用の標旗など選挙運動をする際に必ず携帯しなければならないもので、このほかハガキや新聞広告を出すときに必要な証明書などももらう。
 候補者が選挙運動を行う際には、その経費を公費で負担する仕組みもあり、例えば選挙カーを使った場合には告示後7日間の運動期間中に限り、1日につき1万5300円のクルマ代、7560円の燃料代、1万2500円の運転手代(合計24万7520円)が市から支払われることになる。
 また支持者などに出すハガキについても2000枚分(道議は8000枚)の郵送費用は公費負担で、金額にすると12万4000円。さらにポスター掲示板に貼る候補者ポスター制作費用も400枚分の52万800円を上限に市が負担してくれる。選挙カーの費用など合わせると、市は候補者1人につき89万円以上の負担をしていることになる。従って、例えば40人が立起したとすれば市にとっては3560万円以上の負担が伴うことになる。
 1回の選挙にはこれだけの公費負担があるということを、候補者も市民も知っておく必要があるだろう。中にはこれらの公費負担の権利を行使しないで選挙を行う候補者もおり、そうした心意気は大切にしたい。
 このほか選挙中に個人演説会などで使用する町内会館や公民館などの公営施設は、2日前までに選挙管理員会へ申し込めば、同一会場で火曜~土曜の4日間で1回だけは無料で借りられる。

新人は1年前からの準備が理想的だが…
 では、実際に立候補するためにはまず何をすればよいのか。自分自身で決意した人、周囲から薦められて決意した人など、立起に至るケースは様々あるだろうが、いずれにしてもまずやるべきことは、身近な範囲で理解者や協力者を増やす努力をすること。
 中には「誰の応援もいらない。自分ひとりでやってみる」という強い信念の人もいるだろうが、当選するのに2500票は必要とされる現在の市議選で、何ひとつ組織や地盤を持たない人が当選できる可能性はほとんどない。
 理想的なのは、選挙実施日の1年ほど前から準備を進めることだが、実際には新人の場合は過去の例をみても、半年前に決意表明すれば早い方で、年が明けて2~3ヵ月前からというケースが多いようだ。
 また、知名度の高い新人なら、地道な選挙運動を行わなくても、ムードや勢いだけで当選するということもあるが、無名の新人ではやはりしっかりした政策を持ち、組織づくりに努力していくことが肝心。
 質素に選挙運動を行っても200万円程度は必要とされる市議選。準備期間が長ければ長いほどその経費はかさむ。かつて市議選に銀行から借金して選挙に立ち、落選した後10年間も返済に苦労したという人もいる。
 しかしこれまでには、公費負担分だけで費用の大半を賄ったという候補者も多く、借家やプレハブを建てたりしないで、自宅を選挙事務所にして戦い、当選したというケースもないわけではない。
 市議会議員への門戸は、想像以上に開かれている。意欲のある人は4月21日投開票の市議選に立起してみてはいかが?今ならまだ間に合う。

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この記事は月刊北海道経済2019年03月号に掲載されています。
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