コロナ軽症者「隔離施設」を準備

 道が主体となり、新型コロナウイルス感染者の中で軽症者を隔離する施設(ホテルなど宿泊施設を賃借)の設置の準備が道内全域で進んでいる。上川管内でも、旭川市内のホテル数軒が道の要請を受け入れ準備を進めている。今のところ上川管内では急を要する事態になってはいないが、札幌市のようにすでに隔離施設の利用者が出ているところもあり、クラスター(集団感染)などで一気に感染者が増加する事態に備えている。

上川管内の感染者、幸い少ないが…
 道は本庁に新型コロナウイルス感染者対策本部指揮室を設け、感染者の中でも軽症者を隔離する施設の開設を目的とした宿泊療養斑を組み、道内全域でホテルなどの宿泊施設へ協力を求めている。
 旭川市を含む上川管内では、9月2日現在、新型コロナウイルスに感染した人は46人(実人数で回復後に再び感染した人は1人としてカウント)で、死亡した人はいない。最も多い旭川市では21人となっているが、道内最大の都市、札幌市は1289人と旭川市の60倍余りが感染している。両市の人口を比較すると5・5倍ほどの開きがあり、札幌市のコロナ感染者の数が桁違いに多いことがわかる。
 本誌9月号で市保健所の川辺仁部長インタビューでも指摘されていたように、旭川市の場合、市外の人との交流が少なく、市民が用心して慎重に行動していたことが大きな感染が発生しなかった要因と見られている。
 それとは対象的に、ビジネスなどで本州との人の交流が多い札幌市では、ある程度の感染は致し方ないという意見もあるが、一方で「住民意識が低く、夜の街や医療機関、高齢者施設でのクラスターが多すぎるのではないか」という指摘もある。

第2、第3波で感染拡大の恐れも
 旭川市内の総合病院でコロナ感染者を受け入れるのは、市立病院をはじめ日赤や厚生病院、医大病院、旭川医療センターの5ヵ所。その中で重症者のみを扱うのは、日赤と医大病院の2ヵ所。市立病院と旭川医療センターは元々、感染症病棟や隔離病棟を備えている。
 保健所によると、「9月3日現在、市内の5ヵ所の総合病院でコロナに感染した患者を入院させているのはわずか数人。クラスターなどで急激に感染者が増加した場合、すべてを受け入れることができるのかと言われれば難しいかもしれないが、専門の隔離病棟を増やすことは可能で今のところ余裕はある」という。
 それでも、国が割安な旅行ができる「GoToトラベル」を進めていることや、国民が窮屈な思いをしている中で我慢できずに外出して「夜の街」に繰り出す動きも一方であり、第2、第3波の感染拡大が懸念されている。
 そうなれば、非常時に備えて対策を取ることは不可欠であり、いざというときに備えて道も道内全域に感染者の隔離施設を準備する必要に迫られている。
 実際の動きとしては、すでに札幌市でススキノにあるホテル「東横イン」と契約して開設した隔離施設がある(現在は契約が終了)。その後、同市南区にあるアパホテル(670室)と契約をして当分の間、利用する体制を整えている。

数軒のホテルが協力姿勢
 そのような動きの中で、上川管内では旭川市内のホテルに道が依頼した業者を通じて要請した結果、数軒(噂では3軒)のホテルが道の要請に協力することとなり、感染者を受け入れる準備を進めている。当初、市内で閉校した小中学校を軽症者の隔離施設として活用してはどうかという意見も一部であったが、「室内の改装や医療機関関係者の確保、隔離に耐え切れず〝脱走〟する患者を監視する警備など24時間体制で管理する必要があり、あまりにも経費がかかりすぎる」という理由で、具体化には至らなかったようだ。
 道と契約するホテルは、1棟丸ごと賃貸し、「前もって隔離施設の意義をしっかりと理解していただいた上で、ホテル側に負担をかけないように損をしない程度の金額で契約する。契約終了後は、専門の業者に依頼して館内をしっかりと洗浄することで、ホテルのイメージダウンを極力防ぐよう対策をとる」(道の担当者)。
 ホテル側が実際受け入れる場合は、予約状況などを見ながら、タイミングを図って行われることになる。感染者の数にもよるが、1棟すべてを借り上げるため対象となるホテルはひとまず1軒にとどまる模様だ。宿泊費(食事代含む)は、すべて国からの補助金を充てるため患者負担はない。
 患者への対応は、当然のことながらホテルの従業員ではなく道と市保健所が受け持つ。症状に応じて医師や看護師を派遣することもあり、一定期間(2週間程度)様子を見て、完治していれば施設から解放されることになる。
 これ以上感染者が増えることがないことを祈るばかりだが、「備えあれば憂いなし」と言われるように拡大を未然に防ぐ対策が必要だ。

表紙2010
この記事は月刊北海道経済2020年10月号に掲載されています。
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