場外馬券所がアモール2階に

 中央競馬(JRA)の場外馬券が道北で初めて2013年3月から販売されている旭川レーシングセンター(旭川RC、宮下通15丁目)。昨年12月24日には年の瀬の大一番、第62回有馬記念の馬券を求める人で殺到したが、市内ショッピングセンター、アモール(豊岡3条2丁目)にテナントとして移転することが決まり、3月下旬にリニューアルオープンする。

最後の有馬記念レース
 年末恒例の競馬のグランプリ、有馬記念の映像が流れる旭川RCの大型テレビ。その画面には、大勢のファンの熱い視線が注がれた。千葉県船橋市の中山競馬場で繰り広げられた注目のレース。一番人気の名馬キタサンブラックは渡島管内知内町出身の歌手、北島三郎さんがオーナーで、現役最後のレースとなった。
 キタサンブラックは枠2番から飛び出すとダッシュを利かせ、いきなり先頭に。好スタートを切ったまま、コース内側を軽快に走り、一度も先頭を譲ることなく、後続に1馬身半差をつけて鮮やかな有終の美を飾った。
 次の瞬間、旭川RCでも歓喜の声が沸き上がり、会場は興奮に包まれた。これまでオグリキャップ、ディープインパクトの引退レースも優勝に導いた武豊騎手がキタサンブラックと共にテレビの画面に現われると、ファンからは惜しみない拍手が送られた。旭川と中山競馬場とは1000㌔以上離れているが、身近で見ているかのように興奮しているファンの姿もあった。
 そんな旭川RCを運営する一般社団法人北海道軽種馬振興公社旭川場外馬券発売所では、JRAの馬券を13年3月23日から発売した途端、13年4月から14年3月までのJRA分の馬券売上げが9億8700万円にも上り、当初計画していた7億7600万円を大きく上回る増収となった。
 それとともに道営競馬分が前年対比166%で2億600万円、全国の他の地方競馬分も前年比115%の7億5000万円と、いずれも予想を上回る結果に。入場者数は前年度の2万4000人に対し、13年度は4倍近い8万5000人に。土日開催(一部、祝日も)のJRA分だけでみると、3万4750人が入場したことになり、改めてJRA人気を裏づけた。そして13年度の一番のピークが有馬記念だ。当日の売上げだけで3800万円に上り、一日分の最高売上げを記録している。
 翌14年度には、レース実況やオッズを表示していたブラウン管テレビを順次、大型60インチのデジタルテレビに交換。人の出入りをスムーズにするため場内のレイアウトも変更。馬券購入の際に利用する記帳台も増やすなど改善に努めた。最近はインターネットによる販売が増えつつあるものの、旭川では場外馬券所とはいえ、実際の競馬場にも似た臨場感を味わえるスペースの存在意義が重宝されているようだ。

スポーツクラブと相乗効果?
 旭川RCから移転することになったアモールでは、2006年から07年にかけて敷地内にミニ場外馬券発売所「AIBA旭川豊岡」を新設する計画があった。実現には至らなかったものの、06年の競馬法改正に伴い馬券発売の民間委託が可能になった。
 道としては、道営競馬の05年度赤字が14億9000万円で、これを08年度までに半減することを条件に06年から3年の継続が決まったという苦しい懐事情からすれば、AIBAの設置は有効な手段。しかも、郊外商圏で新設できれば、道内で初めての試みでもあった。
 当時、道農政部や競馬事務所関係者がアモール周辺の町内会、東町小学校、光陽中学校等を訪れ、AIBAを設置する意向を伝えた。競馬法や設置基準によれば、AIBAを受け入れるかどうかについて学校の了解を得る必要はなく、基本的に町内会の判断となったが、町内会の意見は賛否あり、計画が頓挫した経緯がある。
 ところが、今回の移転話は新設するのではなく、テナントとして入るため、前回とは事情が異なる。戸建てで新設するとなるとハードルが高く、なかなか許可が下りにくいが、テナントとして既存施設に入る場合は超えるべきハードルが低く、基本的には地域の同意も不要だ。ただ、慎重を期して近く道などが主催し住民説明会を開く予定だという。
 旭川場外馬券発売所が旭川RCから移転する先は、アモールの2階に広がる空白のスペース。家具販売大手、長谷川グループの「スイートデコレーション」が撤退した跡で、レッスンメニューが豊富なスポーツクラブ「ジョイフィット・ヨガ」に隣接して営業している。このスポーツクラブでは話題のヨガや人気のダンスエクスサイズ、水泳、ニュージーランド発信のグループエクササイズ等も利用できるため、アモールとしては相乗効果も期待できそうだ。
 移転の理由については現在のところ明かされていないが、関係者の話によると、宮下通にある現在の施設の老朽化に伴う耐震上の問題や、駐車場のスペースが不足していることなどが挙げられる。道では昨年12月に設計図の作成や警察、農林水産省との協議をスタート。1月下旬から移転工事に着手し、3月下旬のオープンを予定している。

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この記事は月刊北海道経済2018年2月号に掲載されています。
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