北海道ベースボールリーグ発足

 選手の育成と地域おこしを大きな目標に掲げる北海道ベールボールリーグ(HBL)が正式に発足し、5月8日にリーグ代表、2つのチームの代表らが記者会見を開いた。人手不足に悩む地域社会で働きながら練習を積んで、NPBなどより高い活躍の場に進むことを目指す。新型コロナウイルスの影響は避けられないが、既存のプロ野球ともアマチュア野球とも異なる独自のスタイルが地域社会に根づくかどうかが注目される。

新しい「プロ」の姿
 日本におけるスポーツの王様はなんといっても野球。サッカーやラグビーも人気だが、シーズンを通しての観客動員数は野球が圧倒的に多い。今季は新型コロナウイルスの影響で日本プロ野球機構(NPB=セ・リーグとパ・リーグ)の開幕が遅れているが、それでも道内のマスコミは北海道日本ハムファイターズの選手の動向を事細かに伝えている。
 アマチュア野球も依然として盛ん。コロナ禍さえ収束すれば、あらゆる球場やグラウンドに、小学生から大学に至るまで、さまざまな年齢、レベルのチームが再び登場し、選手たちがボールを追って躍動するはずだ。
 プロ球団ではあるが、従来のプロ野球にはない新しい野球のかたちを追求するのが北海道ベースボールリーグ(HBL)。5月8日に本拠地の一つである美唄市で記者会見を開き、リーグ設立を宣言した。
 HBLの最大の特徴は、選手の育成と地域への人材供給を大きな目標に掲げているということ。入場料で儲けることを追求するわけでも、何が何でもゲームで対戦相手に勝利することをめざすわけでもない。
 初シーズンの今季はレラハンクス富良野BC(レラ=アイヌ語で風、ハンク=へその意)と美唄ブラックダイアモンズ(黒いダイヤ=石炭の意)の2チームが参加し、それぞれ17人、14人の選手を集めた。選手は寮で共同生活し、1日4時間程度、地元の農家や店舗、企業で働いて、生活とチーム活動に必要な資金を稼ぐ。今季は相互の本拠地と準本拠地(レラハンクスは芦別市、ブラックダイアモンズは砂川市)を訪れて70試合を開催するのが、「コロナ前」の構想だった。

育成アカデミー
 HBLの代表を務める出合祐太さん(35歳)は2013年から富良野で選手たちの育成に取り組んできた。
 幼いころから高いレベルで野球に取り組んできた人材のうち、NPBに進めるのは頂点に君臨するごく一部。四国や関西の独立リーグやノンプロで野球を続ける人もいるものの、大半は高校や大学など学校を卒業した時点で他の進路を見つけなければならない。彼らに練習の機会さえ提供すれば、プロ野球など高いレベルで活躍できる人がいるはずと考えた出合さんは、13年に富良野市で北海道ベースボールアカデミー(HBA)を設立、全国から野球を続けたいと願う若者たちを集めた。
 HBAは選手たちは午前は地域で働き、午後を練習に充てるしくみ。選手の側には、セ・パ両リーグのような報酬は得られないものの、毎日まとまった時間を練習に当て、同じような目標を持つ仲間と切磋琢磨できるという魅力があった。人手不足に悩む地域の農家や企業、店舗にとっては、半日とはいえ貴重な人材の供給源となり、両者の利益が一致した。
 7季にわたるHBAの活動から自信を得た出合さんらは今季、富良野のほか美唄でも同様のチームを新たにに設置し、新たな独立リーグとなるHBL設立に踏み切った。HBA時代と同様、地域社会で働きながら野球の練習にも取り組み、さらにはリーグ戦も開く予定だったのだが、新型コロナウイルスによる肺炎の流行で、予想外の荒波の中での船出となった。
 とくに大きな影響を受けたのがレラハンクス。ホテルなどが休業や営業の縮小を余儀なくされ、観光分野で働く予定だった一部の選手について雇用先を確保できなくなった。5月8日の記者会見の時点でも3~4人の仕事が見つかっておらず、チームにとっての最優先課題となっている。
 5月11日のはずだった開幕は当面未定と発表された。経済活動や暮らしが正常化する見通しが立たず、試合の日程も組めない状態だ。また、当初は外国人選手も参加する予定だったが、コロナの影響でまだ実現していない。
 チームの練習にも影響が及ぶ。屋内の練習場やその2階にあるウェイトトレーニング設備は使えない。それでも野外でソーシャルディスタンスを保ちながら、週6日の練習に取り組む。

表紙2006
この続きは月刊北海道経済2020年06月号でお読み下さい。
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