上川中部5農協が合併検討委

上川管内には13農協、そのうち上川中部には9農協が集中しているが、今年2月、あさひかわ、東旭川、東神楽、比布、上川中央の5農協が合併に向けた検討委員会(大西勝視委員長=比布町農協組合長)を設立した。農協は1980年代から始まった金融自由化に対応するための広域合併や、2000年代の市町村合併「平成の大合併」を受けて合併が繰り返されてきた。しかし金融事業の経営がより厳しくなると同時に、組合員の減少による取扱高の減少、コメ余りによる相場の下落などが重なり、農協の前途は依然として厳しい。5農協の合併が成立した場合、単純計算で取扱高は201億円、貯金残高は1876億円(2019年度実績)となり、スケールメリットの発揮が期待される。

2000年代に入り合併が加速
 上川中部5農協の合併検討委について触れる前に、これまで繰り広げられてきた農協の合併を振り返ってみる。農協の合併は、全国的な動きとして2000年に入り本格化した。市町村合併が加速した「平成の大合併」と並行するように農協の合併も進んでいった。
 農協の数は農協合併助成法が施行された1961年から70年代後半にかけて急減し、50年に1万3314あった農協は5000弱まで減少した。さらに、80年代に入り金融自由化が進み、その対応が求められる中で広域合併が進んだ。
 JAグループの資料によると、市町村の平成の大合併が一段落した2005年には、全国で865組合(うち道内123組合)。その15年後の20年4月になると、全国で584組合(05年比33%減)、道内105組合(同15%)までに減少している。
 当然面積が広く、専業農家が多い北海道の組合数は断トツ。道外では新潟県が23組合と最も多い。逆に都府県にわずか1組合というところは奈良県、島根県、香川県、山口県、沖縄県。都道府県単位で見た平均組合数は10となっている。
 このように農協の合併は進んできたわけだが、農協以外でも官民問わず組織の合併は、その歴史や文化、社風の違い、資産や負債の大小などで合併後もまとまりがつかず、一筋縄でいかないのが現実だ。

上川管内は中部を除いて合併が完了
 話を上川管内の農協に戻すが、管内を3分割してみると、上川北部は2003年、下川と美深、中川の3農協が合併して北はるか農協(美深町)が誕生した。翌04年には、士別を中心として剣淵と和寒、朝日町、多寄の5農協が合併して北ひびき農協(士別市)となった。さらに05年になると、名寄市を中心に風連、智恵文が合併して道北なよろ農協(名寄市)となった。いずれの農協も取扱高が100億円を超える大規模な組織となり、現在も堅調に推移している。
 上川中部に目を向けると、02年に旭川市農協と旭正、旭川市神居、鷹栖町北野が合併してあさひかわ農協(旭川市)が誕生した。03年には旭川市の東鷹栖と鷹栖が合併してたいせつ農協(鷹栖町)となった。翌04年には、旭川市の西神楽と東神楽が合併して東神楽農協(東神楽町)となった。
 上川南部は02年、上富良野、東中(中富良野町)、中富良野、富良野、東山地区(富良野市)、山部町(富良野市)、南富良野(99年に占冠と合併)の1市3町1村をまたぐ大合併が成立し、ふらの農協(富良野市)となった。
 こうしてみると、北部と南部は100億円を超える取扱高と大規模な農協組織として落ち着いたようだが、中部の9農協は、取扱高が100億円を超えるびえい農協と60億円台の上川中央を除くと、東旭川と比布の17億円、50億円前後のたいせつや東神楽、あさひかわ、東川、当麻と、その規模は小さいままだ。
 ここにきて再び合併論が持ち上がったのは、農協の経営を苦しめている金融自由化の加速による金融事業(信用事業、共済事業)の大幅減収だ。これは、農協が貯金を集めるインセンティブとして農林中央金庫(農中)から得ていた奨励金が削減され、共済連からの付加収入も減っているのが原因。
 農家が離農する場合、農協から離脱してしまうのは不可避だが、一方で熱心に経営してきた大規模農家の農協離れも経営を圧迫している。ある農協幹部は、「農協を利用して、転作などによる奨励金の手続きのためだけに組合員として残っているが、生産した農産物は独自で販売しているので農協側にはメリットがない。いいように利用されているだけだ」と嘆く。

合併に向けた検討 4月中旬から開始
 このような状況を打破するための対策として19年9月、上川中部9農協の間で将来的な事業連携を模索する委員会が発足した。それ以前から9農協の間では、組合長や幹部らが定期的に勉強会を開き、さまざまな課題について対策を練っていた。
 さらに、20年8月、組織再編研究会が設けられ、今年2月には合併に向けた検討会に参加するかどうかの是非が問われ、びえいと当麻、東川、たいせつ以外の5農協(比布、上川中央、東神楽、東旭川、あさひかわ)が手を挙げて合併検討委員会(大西勝視委員長=比布農協組合長)が設立された。
 同委員会では、真っ先に総会が開催される比布農協(3月26日)を皮切りに、4月上旬まで続く総会の中で組合員らに合併に向けた説明を行い、4月中旬以降、各組合の組合長ら幹部が集まり初会合を開催する予定になっている。

表紙2105
この続きは月刊北海道経済2021年05月号でお読み下さい。
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!