道北口腔センターで内部対立

旭川歯科医師会が運営する道北口腔健康センター(旭川市金星町)で、若手の所長(歯科医師)とベテラン歯科衛生士の間で起きたトラブルが原因で、所長と数人の歯科衛生士が退職した。同センターは一般的な歯科診療施設と違い、心身障がい者を主な患者として、休日診療や在宅訪問診療も手掛けているため、今後の運営がどうなるのか注目されている。

心身障がい者向けの歯科診療施設
 1975年頃、旭川市内に心身障がい者への歯科診療を本格的に行うところがなかったため、旭川歯科医師会はたびたび旭川市から対応できる体制の要望を受けていた。そこで80年、歯科医師会設立30周年を機に、地域社会への貢献を目的に道北口腔健康センターが設立された。道北圏の障がい者向け歯科診療機関としているが、道内全域から患者を受け入れている。
 心身障がい者は健常者と違い感情をセーブすることが難しい場合があるため、診察中にじっとすることができず、歯科衛生士が体を抑えたりしなければスムーズに診療ができないことがある。
 また、障がい者向けの休日診療や在宅訪問診療も、一般的な歯科医院では十分に行われていないことから、口腔センターの役割は極めて大きい。月・火曜日を休診としているが、それ以外の日祝日や年末年始、ゴールデンウィーク期間中なども休まず開院している。
 スタッフの負担が大きいことから、平日は基本的にすべて予約制とし、休日だけは飛び込みの診察も受けている。在宅訪問診療は、基本的に木曜日の午前9時から午後4時半に行っている。
 スタッフは、所長(歯科医師)1人と歯科衛生士が7人(常勤3人、パート4人)で構成されており、ほかにも歯科医師会の会員(開業医)が当番制を敷き、所長を補佐する形で診察を行っている。

もめごとを嫌って所長が退職
 このような体制でこれまで運営してきたが、昨年秋ごろから1人の患者にかける診察時間や完治するまでの診察回数、診察中の患者への接し方など治療の進め方で、若手の所長とベテランの歯科衛生士の間で意見が食い違う事態がたびたび起きた。その状況が歯科衛生士から年下の所長に対する「いじめ行為」だとの情報が外部に広まってしまった。
 さらに、ツイッターなどで情報が拡散してしまい、収拾がつかなくなった。いじめを受けたとされる所長は、このような状況を嫌い、同センターに勤めて1年2ヵ月足らずの今年1月20日付で退職した。
 口腔センターを運営する歯科医師会では、当時の状況を次のように説明する。
 「確かに2人の間で意見の食い違いがあり、関係が悪化していたことに間違いはない。ただ、それがいじめ行為だと断定することはできず、外部に話が漏れていらぬ方向に話が歪められてしまったことに困惑している」
 歯科医師会はコロナ禍も影響したとの見方を示す。
 「患者数が激減し、診察時間の短縮など診療体制を見直さなければならなくなり、スタッフ全員を集めて協議したことがあった。スタッフの中からは、それにより給与が減少することを嫌い退職したいという声もあった。結局、衛生士7人のうち常勤とパート各1人を除いた5人が退職した。その中には歯科医師と対立していた歯科衛生士も含まれている。スタッフにしてみれば、患者数の減少が将来的な仕事に対する不安と相まって、職場での意見の食い違いなど不満が積もり積もってぶつかり合ったのかもしれない。狭い組織で人間関係がうまくいかず、かといって人事異動することもできなかった」

求められる組織の再構築
 ところで、前述したように口腔センターは、特殊な医療機関ということで診療費も低く抑えられている。徴収する診療費には一定の規定があり、患者によって無料から多くても1割負担になっている。そうなると、運営する上でかなりの負担になることから、市から年間3000万円を超える委託料を受けている。地域貢献のための補助として意義があると思えるが、現状のまま少人数のスタッフでは運営は厳しくなり、将来的にセンターを継続するための打開策が必要になってくる。
 市も今回の出来事を踏まえた上で、歯科医師会へしっかりとした診療体制を維持することを要望している。
 歯科医師会は、「現在、歯科衛生士を募集しているところだ。患者の減少を受けて、4月1日からいったん規模を縮小して診療を行っているが、今後患者がどれだけ戻ってくるのか、現状では判断しにくい。それでも、コロナ終息後に元通りの診療体制へ立て直せるように努力する」としている。
 常勤の歯科医師が退職したため、当分の間は当番制で会員の開業医が診察を受け持つことになる。所長と歯科衛生士の間でどんな対立があったのかは闇の中だが、今後は使命感を持って心身障がい者のため頑張ってほしいというのが地域住民の思いではないだろうか。

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この続きは月刊北海道経済2021年05月号でお読み下さい。