老人ホームめぐり実質代表とオーナーが訴訟

旭川市内の春光と豊岡で二つの有料老人ホームを経営する合同会社グッドライフの実質的代表者川越博氏と、資金的なオーナーである高嶋雅文氏(音更町、医療法人社団駒草会理事長)の裁判闘争が旭川地裁で1年にわたって続いている。訴えているのは高嶋氏で、川越氏に対し「有印私文書偽造罪・公正証書原本不実記載罪」を申し立てている。高嶋氏は「川越さんは自分の息子を勝手に役員に入れ、会社を乗っ取ろうとした」と主張、川越氏は「高嶋さんも了解の上でやったことだ」と反論。提訴と同時に裁判所は、役員となった息子の職務執行停止の仮処分を出したが、本訴訟はいまも続いている。裁判では争いの背景にある川越氏の様々な不正疑惑も争点になっているようだ。

本誌に持ち込まれた川越氏へのうっぷん
 この記事は合同会社グッドライフ(本社・旭川市春光町12番地)の役員登記をめぐる争いが本論だが、その根幹となるものは別のところにある。先にそのことから触れてみる。
 今年5月中旬、本誌に「グッドライフが運営する有料老人ホームの川越施設長のことで話を聞いてほしい」と同社従業員から電話があり、2日後に本社を訪ねてきた。電話では「3人で行く」と聞いていたが集まったのは9人。グッドライフの現役職員や退職者、川越氏のこれまでのことをよく知る関係者らだった。電話をくれた人によると「北海道経済に行って川越さんの話をするとLINEで流したら、これだけ集まった」ということだった。
 その時の話の内容は全員が川越氏に対する〝悪口〟だった。その中で、当日聞いた話、後日メールで送ってくれた話などをいくつか紹介してみる。初めに断っておくが、指摘される不正内容について川越氏は、後述する本誌の取材においてすべてを否定している。

不当行為にまつわる生々しい証言の数々
 サービス提供責任者Aさんの話。
 「川越施設長は昨年、処遇改善加算を申請し202万円を得た。それは介護職員に渡さなければならないお金なのだが、全部を息子の友博さんが札幌に店を出す資金に使った。市にはウソの報告書を出していたが、指導監査でバレそうになったので、つじつまあわせのために報告書を作り変え、私が202万円を手当てとしてもらったとする領収書を作った。
 施設長と二人だけの時に、『職員の給料を払うのに使ってしまったので領収書を書いてくれないか、書いてくれないと会社が立ち行かなくなる』と強引に頼まれ、断り切れずに私が202万円を受け取ったとする領収書を書いてしまった。このことは昨年12月に市の指導監査課にも伝えている」
 最近まで管理者をやっていたBさんの話。
 「一昨年の11月に、Mさんからの入居一時金200万円を施設長が自分の懐に入れ、グッドライフの通帳には入金しなかった。同時期、夜勤の職員に手を出してセクハラで労働基準監督署に通報され、監督署の指導を受けた。昨年12月には指導監査課の監査があり、管理者がいなかったことで改善勧告書を書かされた。
 12月から1月にかけては介護職員が足りず、
(いつも豊岡にいる)施設長が春光にいたことにして介護保険の架空請求をした。このことには証拠もある。豊岡の入居一時金については10万円を預かっているにもかかわらず通帳に入金していない。わかっているだけで80万円になる」
 以前、川越氏と一緒に有料老人ホームを経営していたCさんの話。
 「川越さんとは4年ほど前に声を掛けられ一緒に㈱つくしんぼの代表を務めました。川越さんは名前ばかりで実務は全て私に押し付け、役員報酬を当たり前に取っていました。会社の業績は受け継いだ時からマイナスでした。それを知っていながら私に、一緒に経営をやろうと強制的にしつこく迫り、断わることもできない状況でした。
 いざ経営を始めるとマイナス分のお金は全て私に出させ、私の預金分も全て使い、借金までさせられました。川越さんは一切お金を出していません。毎月手渡しで入居費を支払いに来る利用者さんのお金にも手を付け、知らない振りをしていました。
 私と一緒に経営を始めて1年が経とうとする頃(3年ほど前)、施設(住宅型有料老人ホームねりね)に入居していた利用者のおばあちゃんを、私にも家族にも伝えず、勝手に豊岡にあるフラワーという他の有料老人ホームへ連れ出しました。川越さんはフラワーの社長とつながりがあったらしく、ねりねの代表・施設長の籍がありながら、ねりねの運営が続かないことを知っていたかのように、次の金銭目的のためにねりねの負債等を私に押し付け、職場には一切来なくなりフラワーへ逃げ込む始末。その後フラワーでもうまくいかなくなり、もめて高嶋先生の施設へと逃げたようです」

介護業界を転々としてきた川越氏
 すでに70歳を超えている川越氏が介護業界に参入したのは5年ほど前から。以前は肉屋を経営していたというが、詳しいことは関係者もよくわかっていない。川越氏のこの5年ほどの介護業界での動きをたどると、初めは前記したCさんの証言に出てくる「ねりね」、次に「かるむ」、そして「フラワー」。代表者になっていたのは「ねりね」だけ。
 それぞれ事情があって転々としたようだが、この間に業界の仕組みをいろいろ学んだようだ。ちなみに「介護付き有料老人ホームフラワー」は昨年3月、18年6月から同年11月まで看護や介護の職員の人員基準を満たしていないにもかかわらず介護報酬を不正に請求していたとして、3ヵ月間の指定停止処分を受けている。この不正時期は川越氏が関わっていた頃とも一致する。
 そうして川越氏は独立を考えるようになり、現在裁判沙汰になっている音更町の病院理事長・高嶋雅文氏とつながり、合同会社グッドライフを立ち上げ、「グッドライフ春光」、少し遅れて「セラヴィ豊岡」の経営を始めたのが一昨年2月からということになる。
 これから先は川越氏と高嶋氏の争いに話を移す。

会社登記簿から読み取れること
 合同会社グッドライフの法人登記簿によると、会社設立は2019(令和元)年2月13日で資本金は320万円。業務執行社員としては川越博、川越裕二、高嶋裕紀、高嶋衣舞の名前があり、代表社員は川越裕二になっている。
 手元にある登記簿は今年5月下旬にとったもので、設立時の半年後には業務執行社員として川越友博が加わり、同時に代表社員となった記述もみられる。しかしその友博氏は昨年7月31日に業務執行社員、代表社員ともに職務執行停止となっている。ここには高嶋雅文氏が「有印私文書偽造・公正証書原本不実記載」で旭川地裁に訴え、友博氏の代表社員就任は認められないとする仮処分の出た形跡が認められる。
 登記簿にある川越博はこの記事で川越氏として取り上げている人物。川越裕二は川越氏の二男、高嶋裕紀は高嶋氏の息子、高嶋衣舞氏は娘。そして川越友博は川越氏の長男である。会社設立の実質的なオーナーでもある高嶋氏の名前は登記簿には出てこない。
 その代わりが高嶋裕紀、高嶋衣舞で、ともに150万円ずつ出資している形になっている。もちろんこれは名前だけで実際の出資者は高嶋氏である。川越氏と二男の裕二氏はともに10万円ずつの出資で、合わせて320万円の資本金となる。後に川越氏が長男の友博氏を代表社員として登記した時は、川越氏の10万円の半分を友博氏の名義にしたようだ。

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この続きは月刊北海道経済2021年07月号でお読み下さい。