実現するか マルカツ跡タワマン構想

 旧エクス跡に建設が進むタワマン(高層マンション)に次ぐ、旭川2番目のタワマンが実現するのか?閉店、解体が報道された「マルカツデパート」のオーナー・遠藤管財(札幌)の遠藤大介氏は、マルカツの名を残す25階建超の壮大なプランを描いているようだ。

HIRから遠藤管財
 旭川平和通買物公園2条にある「マルカツデパート」が閉店、解体されることになった。営業から100年になる商業施設だけに「地域を支えてきた老舗が姿を消すのは残念だ」と惜しむ声がやまない。
 マルカツの歴史は波乱に富む。始まりは松村勝次郎氏が創業した呉服店で、1924年に現在地の2条7丁目に移転し、36年に丸勝百貨店が設立された。丸井今井と激しい競争を繰り広げ71年には地下1階地上3階のビルに生まれ変わり、道内大手繊維卸の東栄㈱の傘下入りし店名をマルカツデパートとした。その後、増築を重ねて73年に現在の地下1階地上8階となった。その後も5階と7階部分を増築している。
 2001年東栄が破綻し外資系ファンドのローンスターに売却されたが、店名やテナントはそのまま残った。11年には居酒屋やカラオケボックスなどを展開していた㈱海晃(名寄市)へ約3億円で売却された。
 マルカツの再生を目指した海晃だったが、15年に旭川駅前イオンが開業した以降は集客力が落ち、テナントの撤退も目立つようになった。海晃は経営状態が悪化し社名をHIRホールディングスと変更。マルカツ売却は難航したが、昨年21年に、ようやく札幌の不動産グループとの間で話がまとまった。
 遠藤管財合同会社などで構成するグループ代表の遠藤大介氏は購入直後の本誌取材に対し「当面、再生再建の考えで、テナント商業施設として運営し、新設開発も将来の視野」と語っていた。
 遠藤管財所有となってほぼ1年だが、3月に入ってテナント関係者などから「オーナーが、10月末で閉店するとの方針を主要テナントに告げてまわっている」との情報が本誌を含め報道各社に寄せられるようになった。そして4月下旬、「マルカツ閉店、建物は老朽化で解体」との一部報道となった。

マルカツの名残す
 再び、遠藤氏に話を聞くと、
 「以前話したように、しばらくの間は商業施設として運営する予定だった。しかし、設備が老朽化しテナントに水漏れの損害が発生してしまった。再発の恐れもあり、また、1店にとどまらずほかのテナントでも同様の事故が予想される。コロナ感染拡大が長引き、客は戻らず空いたフロアーへのテナント誘致も進んでいない。当初の計画よりも閉店を前倒しすることにした。10月末閉店と決まっているわけではない。閉店時期は流動的」との答えが返ってきた。
 現在、マルカツには100円ショップなど38の店舗と旭川市の職業相談窓口が入居しているが、6階フロアなど空き店舗も目立つ。商業ビルと呼ぶには厳しい状況で、コロナ下で施設運営する遠藤管財は毎月、相当額の赤字が連続している模様。「閉店は未定」とのことだが、年内には閉じ、その後解体されるものと思われる。
 さて、気になるのが解体後の跡地活用だが、遠藤氏は「新たに商業施設とマンションの複合高層ビルを建設する」と話す。
 「再開発し街づくりに貢献するとの思いでマルカツを買った。高層ビルの下層階には商業テナントを入れマルカツデパートという名を引き続き使う考えだ。中層階・上層階がマンションで、25階建てを超えるタワーマンションとなる」と、話は大きい。
 1条買物公園の旧エクス跡は、「1・7地区優良建築物等整備事業」として、高層マンションの建設が進んでいる(本誌20年8月号で詳報)。
 昨年10月に旭川市に提出された「建築計画概要書」によると、建築主は大和ハウス工業㈱北海道支社で、設計・施工は三井住友建設㈱北海道支店。敷地面積2138平方㍍25階建て戸数は157戸。旭川初のタワーマンションとなり、高さ87・2㍍。旭川で最も高い建築物となる。工期は24年10月までとなっている。
 マルカツの敷地面積は2677平方㍍あり、エクス跡地よりも2割以上大きい。遠藤氏によると「当然、エクス跡地のマンションよりも規模が大きいものとなる」

ツインのタワマン
 旭川駅前にあった西武、丸井今井、長崎屋はいずれも撤退し、西武跡地には、低層階にツルハなどが入り中・高層階がホテルの「ツルハ旭川中央ビル」がオープンした。買物公園をはさんで建っていた長崎屋はエクスを経てタワマンに生まれ変わりつつある。さらにマルカツが高層ビルとして再生すれば、買物公園に面してツインのタワマンがそびえ立つことになる。
 旭川は人口33万人の街として一定の都市機能を備え、地震などの災害が稀で安全、ゴルフ場やスキー場なども充実している。中心部にタワマンがそろえば「住み良い地方都市」として本州の富裕層の注目も増す。マルカツ跡地の再開発実現を期待を込めて見守っていきたいが、市内のある不動産業者はこんな懸念も示す。
 「エクス跡のタワマンの総工費は当初額で約85億円。いま建設資材、輸送コストがうなぎのぼりで増額は避けられない。マルカツ跡にそれ以上の規模のビルを建てるとなれば事業費は100億に達する。失礼だが、知名度も大きくない札幌の不動産グループにそんな大事業は無理ではないだろうか?」。遠藤氏自身は「信頼関係の深い事業パートナーが数多くいる。マルカツの後に購入した中川ビル(4条7丁目)はテナントビルとして運営していく」。買物公園での事業推進にあくまでも強気の姿勢だ。

表紙2206
この記事は月刊北海道経済2022年06月号に掲載されています。
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