債権者申立てで競売決まったマルカツ

 経営譲渡が繰り返された末、最後のオーナーがコロナ支援金詐欺で逮捕されたことで閉店、〝塩漬け〟となっていた「マルカツ」。根抵当権を持つ「あすか信用組合」が申し立てたことで旭川地裁が競売開始を決定した。

繰り返された譲渡
 平和通2条買物公園のマルカツは、22年10月に閉館したあと空きビルのまま放置されていたが、土地・建物の根抵当権を持つ在日韓国人系の金融機関「あすか信用組合」(東京)が債権回収のために旭川地裁に競売を申し立てた。これを受けて旭川地裁は7月に競売開始を決定。今後、数ヵ月かけて不動産の調査などを実施して、本年度中にも競売が実施される見込みだ。
 マルカツの歴史は長く、波乱に富む。
 始まりは、松村勝次郎氏が創業した呉服店で、いまからちょうど100年前の1924年に現在地の旭川市2条7丁目に移転し、36年に丸勝百貨店が設立された。
 71年に地下1階地上3階のビルに生まれ変わり、道内大手繊維卸の東栄(旭川市2条9丁目)の傘下に入って店名をマルカツデパートとした。増築を重ねて73年に現在の地下一階地上8階となり、丸井今井と激しい競争を繰り広げた。
 長く「旭川生まれのデパート」として市民に愛されたそのマルカツも、2001年に東栄が民事再生した後は、経営譲渡が繰り返される。
 東栄から外資系ファンドのローンスターに売却され、その10年後には居酒屋やカラオケボックスなどを展開していた海晃(名寄市)へ約3億円で売却された。海晃は懸命に商業施設としての再生を図ったものの、15年に旭川駅前イオンが開業した以降は集客力がさらに下落しテナントの撤退も目立つようになった。
 そのため海晃は売却先を探したものの、売却額が折り合わず買い手が見つからないままに経過した。海晃は社名をHIRホールディングスと変更しマルカツ売却をいそいだが難航。21年になってようやく札幌の不動産グループとの間で話がまとまった。

道と市の差押えも
 登記をみると、マルカツの土地・建物は21年7月に札幌の不動産グループの所有となっている。グループの代表は遠藤大介氏だ。同じ21年7月には、あすか信用組合の根抵当権が設定されている。債務者は宗教法人の栗嶋教会(千歳)で極度額は2億4000万円。形式的には栗嶋教会があすか信組から金を借り、遠藤氏が代表を務めるグループ会社が所有するマルカツビルを担保にしている。しかし実態としては、借りた金は遠藤氏に流れていたものと見られる。遠藤氏にはよくない評判がつきまとっており、本人が代表を務める企業グループでは金融機関から融資を受けることは難しいため、こうした形を取ったものと思われる。
 マルカツ取得直後、遠藤氏は本誌の取材に答えて「建物は解体してそのあとにタワマンを建てる」と再開発構想をぶちあげていたが、おそらく再開発事業で入る金で借金を返すつもりだったのだろうと推測される。しかし、遠藤被告は22年9月にコロナ支援金詐欺容疑で逮捕され、マルカツは閉館となった。
 マルカツの不動産登記には、税金滞納による道と旭川市の差し押さえが複数あり、またあすか信用組合の根抵当登記も残っており、閉館から2年近くが経過して、業を煮やしたあすか信用組合が動いたものと見られる。

市場の5~6割
 競売にかけられることになった物件は、不動産鑑定士が現地調査を実施して、まず初めに一般市場価格に準じた値段を算出する。しかし競売物件は内覧ができず、落札後に何らかの瑕疵(かし)がみつかったとしても保証がなく、そうした事情を織り込んで市価よりも安い「売却基準額」が決められる。売却基準額は市価の7割程度といわれている。競売が行われる際には、この売却基準額を基準にして「入札可能額」が決められる。あまりに安い値段での落札を防ぐための措置で、入札可能額は売却基準額の8割以上とされる。
 売却基準額は市場価格の約7割で、入札可能額は基準額の8割。この計算でいくと、競売物件の最低落札価格は、市場価格の5割から6割ということになる。
 ただ、前述したようにビル化されたのが71年、地下一階地上8階という現在の規模に増築されたのが73年。半世紀以上経過した建物で老朽化は著しい。再開発には新しい施設建設が必要となる。

解体費の〝壁〟
 解体費は億単位の巨額なものとなる。
 3条買物公園にあるファッションビルオクノも、オーナーの石原嘉孝氏が複合商業施設へ建て替える構想を抱いているが巨額な解体費が壁となっている。石原氏の数年前の調査でオクノ解体費6億円。ここ2年ほどで建築関係の諸経費は〝爆上がり〟しており、オクノやマルカツ規模の解体となるといまは10億円近くなるものと予想される。
 庶民には驚くような金額だが、札幌の地価が高くなりすぎた結果、新たなマーケットとして旭川が注目されている。マルカツは旭川の中心部にあり、敷地も広い。再開発にぴったりの条件をそなえている。
 第二のタワーマンション計画が動き出す可能性を秘めている。

この記事は月刊北海道経済2024年9月号に掲載しています。
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!