当麻町太陽光発電所に周辺住民が反対運動

 「緑豊かな自然の景観が5160枚のソーラーパネルに」─。こうしたタイトルを掲げ反対運動に踏み切った住民組織が「当麻中央6区7にメガソーラーはいらないの会(桑原成幸・加納沖共同代表)」だ。太陽光発電所開発事業を積極的に手がける「エネア・リニューアブルエナジー・マネジメント」(東京)との間で大規模開発計画をめぐり平行線をたどっている。(記事は9月11日現在)

民有地で5160枚のソーラーパネル設置?
 太陽光発電事業を担うエネア・リニューアブルエナジー・マネジメント㈱(金明九代表取締役)。同社が当麻町中央6区7の民有地(所有は札幌市の不動産会社)に建設を計画しているのが総出力3018・6キロワットに及ぶ太陽光発電所だ。事業区域は4万2590平方メートル。ソーラーパネル5160枚設置し2025年7月に着工、翌26年8月の運転開始を同社は目指している。
 エネア社は全国各地で200メガワット以上の太陽光発電所を開発しており、現在60メガワット以上の新規開発を進めているという。系統用蓄電池事業にも参入することが決まり、今後5年間で300メガワット以上の太陽光発電所と、300メガワット時以上の系統用蓄電所の開発を目標に掲げている。同社は再生可能エネルギーの普及拡大を目指すと同時に、「環境への配慮」や「地域との共生」、カーボンニュートラルな脱炭素社会早期実現も目標に掲げる。
 すでに道内でも沙流郡(設置容量が1万200キロワット)、千歳市には3ヵ所(同2400、2376、514・1キロワット)で行われ、札幌市(同415キロワット)でも稼働する。今後運用を予定しているのが士別市(同2万1105キロワット)、川上郡(同3533・4キロワット)をはじめ、当麻町だった。
 用地選定にあたっては同社ホームページに次のようにある。「土地の形状や地盤、開発にあたって求められる関係法令や、周辺の自然環境に与える影響を調査。複雑な権利関係の整理を行うだけではなく、地権者との条件交渉や契約手続きのサポートも行う」。施工管理、近隣住民対応については「計画どおりにプロジェクトを進めるため、電気工事と土木工事の豊富な経験と専門知識を持ったチームが各関係者と全体設計や開発工程を管理。住民説明会等、近隣住民と関係構築に向け対応」とも位置づけている。

説明会も複数開催 白紙に戻す署名運動も
 ところが、今回の計画に反対する住民らで構成する「当麻中央6区7にメガソーラーはいらないの会」は署名運動などを現在行っている。署名を呼びかける文面は冒頭に「メガソーラー設置計画 緑豊かな自然の景観が 5160枚のソーラーパネルに」と掲げ、開発予定地は「三方が水田に囲まれ、農業用水としても利用されている清水川の隣」と指摘。この清水川の水を利用した稲作は、「当麻町のお米という誇れる財産を生み出した」とも。計画が実現すれば「景観は完全に破壊され稲作への影響はないのか風評被害はないのか?」、さらには「想定外の自然災害が起きた時に安全は保てるのか?不安は募るばかり」と問題提起する内容になっている。
 同会では「住民は全員一致で建設に反対の立場を取ることに決定」と説明する。かと言って「メガソーラーを含む再生可能エネルギー事業に反対しているわけではありません」と前置きし、「お米づくりに誇りを持って取り組む人、ここにしかない景観に安らぎを感じながら暮らす人が集う『中央6区7にメガソーラーはいらない』」が主旨だ。
 建設に反対する理由として同会では大雨の際、清水川へ土砂が流出する恐れがあり、川の氾濫でパネルが水没した場合、自然発火などによる災害懸念を指摘。森林伐採による防風効果の損失や、動植物の生態系、風向き、気温変化が稲作にもたらす悪影響、景観の破壊による生活環境の悪化ほか地域の魅力自体低下する恐れも。「設置、発電送電、メンテナンス、耐用年数を過ぎたパネルの撤去は一貫した企業が受け持つのでなく、それぞれ全く異なった事業者が行うと明言されている」。これを踏まえ、「責任が分散し、何十年にもわたる運営が正常に行われるか不透明なまま地域住民は不安を抱え過ごさなければならない」と懸念している。
 同会によると、この中央6区7地域は過去20年の間に10世帯が増加、出生者数は延べ20人、新築件数は5件を数える。人口減少傾向にある当麻町において唯一「人口が増加している」。同会は「町の掲げる理念に反するだけではなく、多額の借金をして理想のマイホームを建てた方はもとより、住民に多大な精神的ストレスを与えている」とも指摘。さらに「ひいては当麻町自体の価値が下がることにつながってしまうのでは」とメガソーラー建設計画を白紙に戻す活動に励む。
 当麻町農林業振興課によると、開発予定地は北海道が許認可を行う林地開発許可制度に基づく許可申請が行われており、事前協議の段階では法的基準は満たしているとのこと。さらに同町まちづくり推進課によれば、エネア社が今年3月中旬、開発予定施設敷地境界線から300メートル以内の地区住民6世帯を対象に戸別に訪問して事業説明。町内公民館まとまーるで7月14日開催した説明会には6世帯以外の地区住民も参加した。これを受け桑原・加納共同代表ら地区住民4人が7月16日、役場を訪れ村椿哲朗町長ら町の幹部に「計画には反対しているので協力をしてほしい」と要望したところ7月18日にはエネア社に村椿町長が「住民に丁寧な説明を」と要請した。
 そこで同社は8月8日にもまとまーるで説明会を開催。住民ら約35人が出席し、そのうち5人が積極的に発言を繰り返しエネア社と2時間40分にも及ぶ討論になったものの、折り合いはつかなかった。このため今度は住民が主催し町民を対象とした「報告会」を8月20日に、村椿町長と室屋尚弘副町長出席のもと、まとまーるで開催。現在、「当麻中央6区7にメガソーラーはいらないの会」が活動しているのが反対署名だ。9月11日時点で町内1092人に上る。
 こうして計画をめぐり議論が平行線のままだがまちづくり推進課では法令順守の公正な立場を保ちつつ「どこかで緩和剤になれれば」と寄り添う姿勢を模索。「ある程度、お互い譲歩してどう折り合いをつければいいのか」対応にも四苦八苦している。これに対してエネア社は本誌の取材に「手続きを踏んで法律を遵守し住民との対話を通じて行政も交え可能な範囲で環境に配慮しながら計画を進めていきたい」と回答している。

この記事は月刊北海道経済2024年10月号に掲載しています。
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