「ジャパン・グレートビア・アワード2025」(神奈川県横浜市で2月23、24日、日本地ビール協会主催)。国内最大級のビール品評会で国内メーカー231事業者が出品(大手ビール会社も含めビール総数808)して各ビアスタイル(カテゴリー別)ごとに美味しさが競われた。そんな注目すべき大会で北海道勢で唯一、金賞に輝いたのが大雪地ビール㈱(旭川市宮下通11丁目)だった。(文中敬称略)

ビールソムリエの集い
「グレートビア」とはバランス、アフターテイスト(余韻)、状態が秀でており、なおかつ飲む人の心に残る魅力を秘めたビールを指す。品評会で重点的に評価されるのがこうした長所や魅力で、ビールごとの絶対評価で競われるのもジャパン・グレートビア・アワードならでは。ビアギーク、いわゆる〝ビールソムリエの集い〟とも呼ばれる品評会。審査員がディスカッションしながらビアスタイル・ガイドラインに沿って5つの品質評価「外観、アロマ、フレーバー、ボディ、全体印象」項目で厳正に採点する。
ビアスタイルに応じて競われ、大雪地ビールが出品したビール「黒岳」は「ジャーマンスタイル・ドッペルボック」と呼ばれるビアスタイル。その色合いはカッパー(銅色)からダーク・ブラウンの範囲内で仕上げ、しかもクリアな外観であって、冷温白濁な状態ではないことが求められる。素材のホップのフレーバーと苦味はローレベルで抑える必要があり、モルトはトーストのような香りを放つイメージ。カラメルやタフィーキャンデーのキャラクターも備えれば深みのある味わいをもたらすが、甘みがあるため飲み飽きてしまうようなしつこさがあってはならない。さらにはローストモルト由来の渋みがあるのもジャーマンスタイルドッペルボックが求めるビアスタイルではない。
こうした基準に照らし見事「金賞」を獲得したのが大雪地ビールの銘柄「黒岳」だ。文字どおり大雪山連峰の一角にある黒岳をイメージしたオリジナルクラフトビール。黒麦芽を含め、通常より多く麦芽を使った高アルコール(8%)タイプで、のど越しの良さ、濃厚な風味がありマニアをとらえて離さない。ちなみにビアスタイルは異なるが銀賞には上面発酵酵母で発酵、熟成させた切れのあるフルーティーな魅力の「ケラ・ピルカ」、銅賞には麦芽を主原料に富良野大麦を副原料とした逸品「富良野大麦」が選ばれている。
〝後進国〟でも腕を競う
醸造所の発酵タンクで試飲する大雪地ビールの醸造士、高木ドルフ里樹。彼のモットーは「ビールをデザインする」。ビールづくりの原点は、オーストラリアや米国などクラフトビールのメッカで飲み歩きした経験にある。クラフトビールの魅力は多様さにある。喉ごしを楽しみ、色合いや香り、味に酔いしれ幸せな気分になる。高木は地域資源をモチーフにオリジナルビールのデザインに情熱を注ぎ、クラフトビール文化を盛り上げようと、醸造士仲間たちと「エゾ・ブルワーズ・アッセンブル(EBA)」グループを立ち上げ新商品も開発。それぞれ道内各地ご当地感があって味わい深い。
クラフトビール。それこそブルワー(醸造士)の創意工夫しだいで個性と美味しさが両立した味わいが多様に広がる。地ビールとも呼ばれ、地域性を豊かに発揮できるのもクラフトビールならではの魅力。大雪地ビールは道北開拓に伴う物流拠点基地として建設した上川倉庫群(文化庁登録有形文化財)に誕生した食文化の発信基地でもあり、さまざまな機能を果たすことができる可能性も高い。
クラフトビールの原料となるホップを念入りにほぐす高木の視線は熱く「クラフトビールというのは、その土地の文化や歴史的背景から生まれるビアスタイルでもある」。そうしたビールの背景を知った上でリスペクトが飲む側にも生まれ、余韻にもつながる。全国津々浦々、国内外を問わず、現時点でビアスタイルはざっと150種類ある。クラフトビール市場全体の20%以上のシェアを占めるアメリカを筆頭に、オーストラリアや韓国、イギリスで人気が高い。
これらと比べると日本での消費は、全体の2%未満に過ぎず〝クラフトビール後進国〟ととらえざるを得ない。それでも「派手なだけのビールは作れない。クラシカルなモルトの特徴を表現したビールづくりが好きだし
キャラクターが濃くて、いろんな人に親しまれるビールづくりを心がけています」と高木。品評会では那須高原や南信州、奥羽山脈など過去最多の21銘柄が金賞を射止め、後進国であってもビールづくりで腕を競い合う。
ドッペルボックとは、後ろ足で蹴り上げるオスヤギのこと。エジプトでピラミッド造りに励んだ作業員たちが水代わりにしたのがビールの由来ともされるが、さらに高木にはクラフトビールの新たな構想があるらしい。

