深刻なドライバー不足に悩む路線バス会社だが、インバウンドの復活で利用者が増加し24年決算は増収増益となっている。富良野バス、道北バスは社員に高額な決算手当を支給したが、経営権がファンドに移った旭川電気軌道は〝決算手当ゼロ〟。明暗がくっきりと分かれている。

観光、スキー
旭川市内を走る路線バスのドライバーAさんから、こんな情報が寄せられた。
「急増するインバウンド(訪日外国人観光客)効果で、旭山動物園や美瑛青い池など人気の観光スポットへ走るバスの乗客が急増した。冬季は富良野スキー場、カムイスキーリンクスへどっと外国人スキーヤーが押し寄せて、スキー場へ向かうバスは満員盛況の状態。増収増益となった富良野バスでは、社員に1人170万円の巨額な決算手当を支給した。道北バスも社員1人70万円前後の決算手当てが出たようだ」
燃料高騰、ドライバー不足とネガティブな話題ばかりが続いたバス業界にとって、久々の明るい話題だ。
富良野バスの直近3期の売上をみると、23年3月期4億8200万円、24年3月6億8500万円、25年3月6億4000万円。前期も業績好調となっている。インバウンド効果だけでなく、最先端半導体の国産化をめざす「ラピダス」千歳工場関連の人員輸送業務を開拓した〝営業努力〟も売り上げ増につながっている。
道北バスの25年3月期決算の売上高は15億9600万円、純利益4868万円。やはり増収増益となった。決算手当てとして給与2ヵ月分プラスアルファが支給された模様だ。観光地や空港を結ぶ路線だけでなく都市間バスも好調で運賃改定も売り上げ増に貢献した。
労基の申告監督
旭川電気軌道はどうかというと、25年3月期決算の売上高は23億560万円、経常利益1億4895万円、当期純利益1億8230万円。
決算報告書に記された「事業の経過及びその成果」によると
─バス事業は、運賃改定の効果や人流の戻りなどにより前事業年度より向上いたしました。
乗合事業での収入は1355百万円で前事業年度に比べ103%であり48百万円の増加でした。貸切バス事業は運賃制度の改定による効果もあり収入が237百万円で前事業年度122%でした。都市間バスも前事業年度との比較で130%で収入は56百万円となり、バス事業収入は1649百万円となり、前事業年度に比べ106百万円の増収となりました。不動産事業は、比較的賃貸案件が安定しており今事業年度の収入は656百万円(前期比101%、増収3百万円)となっております」
前年度24年3月期の売上高は21億9600万円で、経常利益、当期純利益ともにマイナス。2019年以来6期連続の赤字決算となっていた。一転しての増収増益の今期決算は立派なものだが、決算手当てはゼロ、支給されなかった。
Aさんが話す。
「労働環境が悪く、電気軌道では10人を超えるドライバーが病欠となっている。4月には労働基準監督署の査察が入った。定期的に事業所を選んで行う『定期監督』ではなく労働者が会社の法令違反について申告・相談をしたことにより行われる『申告監督』だ。早い話がドライバーのチクリ。複数のドライバーが労基に訴えたようだ」
夜間運行休止?
慢性的なドライバー不足にあえぐ路線バス会社では、公休者に休日出勤してもらう、あるいは早番の人に残業を、遅番の人に早朝出勤を依頼するなどして穴を埋めることが常態化している。大型2種免許を所持する管理職の出番もたびたびある。そんな風にあの手この手のシフトローテーションで回し、路線を維持している。
「病欠者が10人を超える旭川電気軌道ではローテーションが限界にきている。社内では〝早朝の便と夜間の運行を止めるしかない〟という話が出ている」(Aさん)。
夜の8時9時10時台は、飲んで帰宅する勤め人や午後から勤務のパートなどの乗客がけっこう多い。夜間運行中止となったら市民生活への影響は大きい。
大正15年創業の100企業・旭川電気軌道は今年3月28日に開かれた臨時株主総会で、正式に独立系投資ファンドJWPの傘下となった。臨時株主総会終了後に河西利記社長は「北見バス、札幌観光バスなどと連携し持続的な企業を目指す。路線バスは維持する」とコメントしているが、インバウンド効果で回復したかに見える今期決算も、バス事業に限れば7700万円の経常損失を計上。不動産事業の経常利益(2億2600万円)で穴埋めしている図式はこれまでのままだ。
赤字を垂れ流すバス事業にファンドは興味がない。業績好調の子会社・富良野バスは33%出資する富良野市がファンドから買い取る意向とされる。多数のドライバーが病欠、将来に不安を抱く整備スタッフの退職…。持続的な経営、路線バスの維持はおぼつかない〝暗雲低迷〟の旭川電気軌道だ。

