体力ない老人福祉施設は廃業の危機

 原則3年に一度改定される介護報酬。今年はその年にあたり2・27%減額される予定だが、職員待遇の改善も求められ、老人施設の経営者にとってダブルパンチになる。そのほか、老人施設が運営する訪問介護やデイサービスも減額の対象になっていることから実質10%近い減収となる施設もあり、体力のない経営者は廃業の危機に瀕している。

開設してわずか1ヵ月で破たん
昨年冬、旭川市内の住宅型有料老人ホームが、開設わずか1ヵ月あまりで経営不振に陥る事態になった。施設の工事費や運転資金など約2億円を金融機関から全額借り入れたが、「介護ブローカー」と呼ばれる人物に、施設開設までの指導料として1000万円を超える金を支払ったため、運転資金が底をついて〝万事休す〟となった。その後、この施設は別の業者に1億円で売却されて運営されている。
破たんした経営者は、介護施設で働いた経験があり、ケアマネージャーの資格を持つ優秀な介護職員だったといわれている。ただ経営者となると、多くのスタッフを管理する経営センスが求められる。資金力も必須の条件。少なくとも半年以上は赤字経営が続けられる体力がなければ、この業界には生き残れない。
手元資金がなく、資金の大半を金融機関から借り入れたためこのような事態となったのは、経営者の見通しが甘すぎたといえばそれまでだが、ある業界関係者は「開設準備を依頼した介護ブローカーにまんまとせしめられた。介護業界の経験が豊富でも、素人考えで経営はできない」と、認識の甘さを指摘する。
こういった事例は、旭川の他の施設でも少なからず発生している。以前本誌には、手元の資金が乏しく、ほとんど金融機関に頼って施設を開いたものの、開設当初はなかなか入居者が集まらず、破たん寸前までいった経営者から情報が寄せられた。この経営者はベテランの同業者に支援を求めてピンチを打開しようとしたが、条件を巡って折り合いがつかず、本誌の取材に「だまされた」と語った。しかし、この経営者の言葉から伝わってきたのは、むしろ経営計画の甘さだった。

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この続きは月刊北海道経済2015年2月号でお読みください。
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