最終処分場計画振り出しに?

 現在の江丹別から他の場所に移転し、新設を考えていた旭川市の最終処分場計画が、ここ数年の整備費高騰を理由に、振り出しに近い状態に戻ってしまった。場所の選定は順調に進んでいたのだが、予定していた覆蓋型(屋根付き)では建設コストが高くなるため、従来のオープン型へ舵を切り、それにより敷地も4倍程度の広さが必要となってきた。市環境部では「今年の早い時期に場所を決め、地域協議を開始したい」としているが、計画の遅れは否めない。

覆蓋型計画で進んでいたが
 現在使用している旭川市廃棄物処分場(江丹別町芳野、03年7月開設)は当初、埋立期限を18年3月までの15年間としていた。しかしその後、ごみの減量化や資源化に取り組んだ結果、埋立量が最大期の約4分の1に減少し、埋立期限まで使用を続けてもなお12年間分の容量が余る見込みとなった。このため旭川市は、同処分場の継続的な使用について江丹別地域と協議を重ね、13年11月に、埋立期間を12年間延長し30年3月までとする変更協定を締結した。
 延長が決まったとはいえ、最終処分場の建設には江丹別で思い知らされたように長い道のりが必要。市は処分場が閉鎖される30年3月を見据え、17年6月には次期最終処分場の整備基本構想を策定した。
 その後は市の付属機関である検討委員会を公募委員らによって立ち上げ、その一方でパブリックコメント(意見募集)や市民説明会を実施。万全を期す形で市内数ヵ所に絞り込んだ建設候補地の比較評価を行ってきた。
 そうした中で市は、新しい最終処分場は基本施設が覆蓋型(屋根付き)構造で、埋立期間は30年度から44年度までの15年間。埋立量は17万8440㌧(約12万8700立法㍍)を見込み、施設整備に必要な面積は4万平方㍍(約1万2千坪)程度とする構想をまとめた。
 クローズド型と呼ばれる覆蓋型処分場は近年全国的に増えているタイプで、従来旭川市が採用してきたオープン型に比べ建設コストはかかるが、天候に左右されず埋立作業ができ、臭気の拡散、廃棄物の飛散、鳥獣類の飛来など周辺環境への影響を回避でき、維持管理費の低減もはかれる。
 また、屋根付き施設であることから、15年の使用期間が終わった後にはテニスコートやイベント会場など様々な用途の屋内施設として利用することが考えられ、クリーンなイメージのため、設置にあたって住民理解が得られやすいという優位性もあった。
 そして何よりも、現在の江丹別芳野の敷地約18万平方㍍に比べ断然コンパクトな面積で済むため、用地交渉もしやすいという利点があった。しかしこうした皮算用にも大きな方向転換が迫られる事態になってしまった。

オープン型だと広い敷地が必要
 市は2月中旬に開かれた市議会民生委員会で、建て直し計画のあった可燃ごみ焼却施設「近文清掃工場」の新設を断念し、延命化策に切り替えるとともに、不燃ごみを埋め立てる最終処分場の新設計画を見直すことを表明した。
 理由はともに、当初見積もりより施設整備費が高くなったため。市は東日本大震災の復興需要や東京五輪の建設ラッシュで建設資材などの工事費が高騰したことを上げており、最終処分場については当初予定の約50億円から約100億円に膨らんでしまったという。
 2倍もの狂いが生じてしまったとすれば、計画を見直すのもやむを得ない。市は処分場施設について、用地を取得しやすい覆蓋型のコンパクトなものを考えていたが、その建物施設が想定した金額を大きく上回るとなれば、費用が安く済むオープン型に方針を変えてしまいたくなる。
 しかしそれだと、これまで入念に比較評価を進めて候補地を絞り込み、あとは地元住民の理解を得るだけだった建設場所がまったく違ったものになってくる。現在の江丹別のようなオープン型だと、覆蓋型で想定していた用地約4㌶の4倍程度の広さが必要となる。
 つまり、何年もかけてきた候補地選定作業は振り出しに戻ったようなものなのである。新しい処分場はどんなに遅くとも9年後にはオープンさせなければならないわけで、計画では22年度中に用地選定、地域協議を終えることになっている。

今年の早い時期に候補地
 かつて江丹別芳野に造った時は、候補地の選定作業に着手してから供用開始にまで13年という時間を要している。今回の場合、すでに用地選定作業は進んでいるが、予定していた用地より広い場所となると、さかのぼってまた選定作業をやり直さなければならない。
 市環境部はまだ、覆蓋型からオープン型への方向転換をはっきりは表明していないが、すでに既成事実に近いものと思われる。西川市長も現在開催中の市議会で「候補地選定はこれまで積み重ねてきたデータを生かし、予定通り終わらすようにしたいが、大変厳しいスケジュールではある」と答弁しており、市環境部も「今年の早い時期に建設候補地を決めたい」(渡辺顕久次長)と、作業に遅れを出さない構え。
 ことを急ぐあまり江丹別芳野で経験したような〝住民闘争〟にならないことを願うばかりだ。

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この記事は月刊北海道経済2021年04月号に掲載されています。
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