次期最終処分場は春志内

 旭川市の次期一般廃棄物最終処分場(通称ごみ処分場)の建設候補地が市内神居町春志内地区に決まった。3月8日に市が正式発表したもので、そう聞かされれば「なるほど、そんな場所があったのか」とうなずく市民も多いのではないか。迷惑施設の代表格でもあるごみ処分場は、その新設をめぐり江丹別地域に大混乱を巻き起こした歴史的経緯もある。市がそんな過去の反省の上に立って選んだ場所が春志内だった。

基本構想見直すアクシデントも
 現在稼働中の江丹別芳野のごみ処分場の使用期限が2030(令和12)年3月で切れるため、市は11年6月に市長の私的諮問機関「次期廃棄物最終処分場検討委員会」を立ち上げた。江丹別の後のごみ処分場をどこにするか、手順を踏んだ場所探しが市民に見える形で動き出したのはこの時からだった。
 その後市は、市内にある12ヵ所の造成可能地エリアを示しながら建設候補地の比較評価、パブリックコメントの実施、整備基本構想を基にした市民説明会の開催、さらには附属機関の「最終処分場整備検討委員会」を立ち上げるなど、市民とていねいな協議を重ねてきた。しかし昨年、順調に進んできたはずの場所探しが思わぬ展開を迎えることになった。
 2017年に策定した基本構想では、今後の埋め立て量の減少を見越し、処分場施設は覆蓋型(屋根付き)のコンパクトなものとし、必要な用地の広さも現在の芳野処分場の4分の1程度と見込んでいた。しかし資材の高騰で覆蓋型では建設コストが高くなり、しかも近文清掃工場の焼却機能充実が見送られ、埋め立て量の減少も見込めなくなったため、容量の大きい従来のオープン型へ舵を切らざるを得なくなった。昨年7月には新たな基本方針を策定し、出直しをはかることにした。
 この時、市環境部では「早い時期に場所を決め、地域協議を開始したい」としていた。7月に基本方針を立てたばかりなのに、早い時期に場所を決めたいと言い切ったことは、場所探しがまったく新しい取り組みというわけではなく、ある程度、いやすでにかなりの見込みがあったからにほかならない。

実らなかった公募だが、手際よかった市の対応
 次期ごみ処分場の候補地探しを進める旭川市環境部清掃施設整備課は、昨年10月11日から12月29日まで一般廃棄物最終処分場の建設候補地の公募に踏み切った。一見、自分たちでは決めかねるので地域の声を反映した候補地を公募という手段で求めようという算段のようにも見えたが、締め切りまでに名乗りを上げる地域は1件もなかった。
 しかし市は、応募ゼロも想定内だったのか、特段の焦りを見せることもなく「年明けの2月上旬までには市独自の選考で候補地を絞りこむ」と言い切った。
 その自信ありげな言葉からは、すでにメドがついていると言わんばかりの様子も読み取れた。案の定、実際にそうだったのである。あえて迷惑施設の公募という手段に出たのも、「手を尽くした」というアリバイづくりのようなものだったのかもしれない。
 「市が独自に2月上旬までには絞り込む」と言った通り、清掃施設整備課では今年に入ってから市内5ヵ所にまで候補地を絞り込み、2月中旬には庁内会議にかけた。会議には当時の赤岡昌弘副市長や関係部長が出席したが、清掃施設整備課が示した5ヵ所について順位付けを行い、結果、1番となった「神居町春志内」に決まった。同課ではすでに春志内の予定地となる地権者2人から、候補地とすることに同意が得られる感触を持っていたことが決め手となったようだ。
 清掃施設整備課では「立地環境の評価や数値では表せない定性評価も行ったうえで春志内地区が1番という結果になった」と万全の選考だったことを強調し、ひと安心した表情だが、一方では「本当に気を抜けないのはこれから」と気持ちを引き締める。

住民説明会は3市民委が対象
 かつての江丹別芳野の例を出すまでもなく、迷惑施設の建設場所を見つけたとしても、肝心なのは地権者だけでなく地域住民との交渉。合意を得るためには十分な説明、話し合いが欠かせない。
 市が描いている場所は、市街地から国道12号で台場を抜け、観魚橋を過ぎたあたりの左側一帯。山とも丘とも言えない規模の丘陵地帯で、今は雪があって現場の確認はできないがグーグルアースで上から見ると原野のような状態。かつてはこの辺に住宅を建て生活していた人もいたようだが、今はまったくの無人地帯。
 清掃施設整備課によると石狩川をはさんで対岸に1軒住宅があるだけで、少なくとも建設予定地周辺に民家はない。しかし迷惑施設ができることによる環境等への影響はさらに広範囲に及ぶことになり、市では今後、市民委員会を通じて各地で住民説明会を行うことにしている。
 対象となる地域を市民委員会単位で言うと石狩川対岸の嵐山(江丹別町嵐山・春日・共和)、台場(神居町台場・台場東)、西神居(神居町神居古潭・西岡・豊里)の3市民委員会。市は、2030年からの供用開始を目指して近々に地域住民との話し合いに入っていく。

利権絡む要素は見当たらない
 建設を予定する17・4㌶の地域の大半は民間人2人の所有で、一部市有地もある。市は今後、現地で正確な測量を行い、2026(令和8)年までには買収用地を確定し、正式に売買契約を交わすことにしている。
 ごみ処分場は今でも「迷惑施設」としてとらえられているが、実際に迷惑極まりなかったのは江丹別の共和地区や中園地区にあった20年以上も前の話。当時、水質汚染やカラス被害が著しく住民生活が脅かされていたことは間違いないが、芳野に移ってからは見違えるほどに施設整備がなされ、ごみ分別が進むようになってからは被害が激減した。
 また、考え方によってはこの迷惑施設も、地域おこしに活用できる有形の財産というとらえ方ができなくもない。かつて江丹別ではこの有形財産を、地域振興のためという不文律を破り、個人や企業の利得に活用しようとする不届きな事例も見受けられたが、春志内ではそのような利権が絡んでくる要素は今のところ見受けられない。
 今後予定される市の説明会でも住民の声を2分するような大きな波乱は予測できない。順調に進めば、住民合意を得た後に測量を行い、処分場用地を確定し、2026年には地権者と正式契約して実施設計に入り、翌年から建設工事に取りかかる段取り。供用開始は今から8年後の2030年4月が見込まれる。

次期産廃処理施設どうする振興公社
 次期一般廃棄物最終処分場の建設候補地が春志内地区で一定のめどがついた一方、産業廃棄物(産廃)を処理する旭川廃棄物処理センター(江丹別共和)の次期建設予定地はなかなか適地が見つからず、管理する㈱旭川振興公社(赤岡昌弘社長)が苦労している。
 同センターの埋め立て終了期間は当初予定では2028年度末だったが、それより早くに容量オーバーすることがわかり、ここ4~5年のうちに次の処分場を建設しなければならない切羽詰まった状況に立たされている。
 建設に必要な用地は、春志内に決まった面積よりさらに大きなものが想定されており、昨年来、振興公社の役員、職員らが懸命に適地を探している。しかし今現在、これといった見通しは立っていない。
 第三セクターである振興公社の仕事には市も無関心ではないが、いかんせん市は一般廃棄物の処分場探しに集中していたため、「振興公社のことは振興公社で」といった感じだった。市民的には「産廃も一般廃棄物も同じエリアに造ればいい」と思ってしまうのだが、何か問題でもあるのか、その発想は両者とも薄いようだ。
 市が次期一般廃棄物最終処分場のために長い時間をかけて作った環境調査のデータもあるわけだから、振興公社もその気になれば適地探しにさほど腐心しなくともよいと思うのだが。なにか妨げとなるものでもあるのだろうか。今後の旭川振興公社の動向が関心事となっていく。

表紙2205
この記事は月刊北海道経済2022年05月号に掲載されています。
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