中国系金属回収業者道内に出没

 中国系の鉄くず業者が旭川市内を含む道内で存在感を増しているのは昨年9月号で本誌が紹介した通り。「中国人と思われる2人組がうちにも買い取りにやってきた」との証言が写真付きで本誌に寄せられた。

トラックで道内回り
 札幌市にある丘珠地区に4月上旬、年季の入った2トントラックが現れた。ある業者の前で停まったトラックの助手席から、40歳手前と思われる女が下りてきた。あまり上手とは言えない日本語で言った。「不要な鉄くずはないか。ただで引き取る」。この業者の経営者は、「帰れ」とだけ言った。女は助手席へと戻り、トラックは走り去った。運転席には男が乗っている様子だったが、車から降りなかった。
 経営者が本誌に提供した写真には「つくば」ナンバーが取り付けてある。つくば市から札幌まで約1100キロ。2人組の国籍を示す証拠はないが、「全国から北海道に中国人が集まり、鉄くずを買い集めている」との情報に合致する。
 本誌昨年9月号で既報の通り、いま道内で、金属スクラップ業界で中国系の業者が存在感を増している。中国人(多くはトラックの運転ができる人と、カタコトでも日本語が話せる人の2人組)が、鉄くずを持っていそうな業者や農家などを1軒ずつ訪ね歩き、「鉄くずがあれば引き取る」と声をかけている。道内には旭川市、滝川市などに中国系の業者があるが、トラックで買い付けにまわっているのは、本州に生活の拠点を置く中国人。つまり日本国内で出稼ぎしていることになる。こうした情報は記者の耳に以前から入っていたが、今回は写真付きで生々しい証言を得たというわけだ。
 丘珠に現れた中国人2人組がどんな人物なのかは不明だが、素人であるのは明らか。訪れた先は金属を取り扱っている業者であり、鉄くずを専門業者が有償で扱っているのを知っているから、「ただで引き取る」との彼ら2人にとり一方的に有利な取引に応じるわけもない。しかし、故障して動かなくなった農業機械の処分に困っている高齢の農家などが、タダで引き取ってくれるのならうれしいと、申し出に応じることもあるのだという。

「タダで」は規制困難
 鉄くずの買い取りは誰もができる行為ではない。北海道の金属くず回収業に関する条例は、「金属くず回収業を営もうとする者は、北海道公安委員会の許可を受けなければならない」と定めている。「金属くず回収業者は、行商をするときは、公安委員会規則で定める様式の行商従事者証を携帯していなければならない」「金属くず回収業者は、その代理人、使用人その他の従業者に行商をさせるときは、当該代理人等に、前項の行商従事者証を携帯させなければならない」といったルールも定められている。
 道内の業界関係者の中には、こうしたルールに基づいて、中国系企業の行動を規制するべきだと主張する人もいるが、警察は取り締まりに消極的。それは、条例にこんな一文があるためだ。「この条例において『金属くず回収業』とは、金属くずを売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であって、金属くずを売却することのみを行うもの以外のものをいう」。丘珠に現れた女が申し出たのは「ただで引き取る」ということ。買い取りや他の商品との交換であれば「金属くず回収業」を営む者と見なされるが、ただで引き取る行為は条例の対象外であり、不許可での事業行為や行商従業者証商の不携帯で罰することはできない。
 地元業者を悩ませているのは、こうした無料の引き取りより、むしろ有償での買い取りだ。
 業界関係者は証言する。「この業界には長い間、新規参入がなく、長期間の取引が行われてきた。鉄くずを出す事業者は決まっており、いずれも長年、同じ回収業者と取引してきた。他の業者の取引先に営業をかける行為はご法度。そこに中国系の業者が乗り込んできた。彼らはしきたりなど気にしないし、高値で鉄くずを買いあさることもある」
 再び、本州から来ている中国人による買い集めに注目すれば、彼らは本州からトラックで北海道に来る。北海道で集めた鉄くずを本州の業者に持ち込んでいては効率が悪いため、道内にある業者に持ち込む。常識的に考えて、この取引が無償だとは考えにくいが、金銭の授受を証明することができなければ、条例に基づき持ち込んだ業者、買い取った業者を罰するのは難しい。
 では条例を改正して無償の引き取りも規制対象にすれば良いかといえば、鉄くずの処分に困っている人が、無償の回収に助かっているのも現実で、ルールの厳格化はゴミや不法投棄の増加につながりかねない。
 中国系の鉄くず回収業者については、全国で問題が起きている。騒音、不法就労、盗品の買い取り…。大半の中国系業者はルールを守っていると信じたいが、地元業者は意思疎通のチャンネルがないことから、彼らの存在への不安感を募らせている。

もはや不可欠な存在
 中国籍を持ち日本に定住している人は昨年末の時点で87万人。20~39歳の働き盛りの年齢層が約半数を占める。非熟練労働者として日本の3K現場で彼らが汗を流した時期もあったが、近年は高度専門職、経営・管理ビザで来日する人材も多く、もはや彼らは日本社会にとり不可欠な一部となっている。
 中国系鉄くず回収業者も日本社会に定着することを望むなら、地元業者とのコミュニケーションやルールの順守が必要なはずだ。

この記事は月刊北海道経済6月号に掲載されています。
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