「旭川宝田学園」(五十嵐敦子理事長)が、運営する「旭川医療秘書専門学校」を東京のキャリア支援企業「UZUZ」に譲渡した。旭川出身のUZUZ代表は、「ITとDX教育のノウハウを生かしキャリアを確実につかめる学校づくりを目指す」としている。

新オーナー代表は旭川出身
昨年師走、新しい学校法人が登記された。
名称は「学校法人UZUZ」。主たる事業所は「北海道旭川市九条通十一丁目2191番16」。目的等にはこうある─「この法人は、教育基本法及び学校教育法に従い学校教育を行い、高い人間性によって地域創生に貢献しながらウズウズ(活き活きと)働く人材を育成することを目的とする。上記の目的を達成するため、次に掲げる学校を設置する。⑴旭川医療秘書専門学校 商業実務分野専門課程 医療秘書課」。役員に関する事項は「東京都渋谷区代々木 理事長岡本啓毅」
理事長の岡本氏は東京都新宿区に本社を置く「㈱UZUZ」の代表取締役。旭川市民にはほとんど馴染みのないこの企業の代表が社名と同じ名称の学校法人を設立し、旭川で専門学校の経営、運営に乗り出すということを法人登記は示している。
旭川医療秘書は、旭川宝田学園が運営する専門学校。病院や調剤薬局などで活躍する医療事務員、調剤事務員、一般事務員など、医療機関などで必要不可欠な事務のスペシャリストを養成している。
定員は40名で2年制だが、少子化の影響もあって定員充足率は長く60~70%台と低迷していた。ただ、同じ宝田学園が運営する旭川明成高等学校の柿崎哲平教頭が高校の教頭職を兼務しながら旭川医療秘書の校長に就任して以降、道北と空知の高校を軒並み回る広報活動を徹底。また、「診療報酬請求事務能力認定試験」などの難関資格合格のための学習指導の強化、新しいカリキュラム「医薬品登録販売者資格取得」をスタートさせるなど攻めの学校経営に取り組み、23年度以降は定員充足率がアップし収支も改善し黒字に転換している。現場に近い実践的な授業に定評があり、近年は就職内定率100%を誇る。
専門学校を取り巻く経営環境は、急速に進む少子化が強いアゲインスト。その中で柿崎校長以下スタッフが奮戦して経営が好転している旭川医療秘書の設置者・学校法人がなぜ、宝田学園からUZUZへと設置者変更となるのか?旭川医療秘書、旭川明成高校の保護者、学校職員ならずとも大いに気になるところ。そもそもUZUZとはどのような企業なのか。
代表は旭川出身
UZUZは東京新宿に本社を置き、大阪に支店、横浜と旭川にオフィスを構えている。グループ社員数は515名、グループ売上高は35億円(いずれも2025年のデータ)。
UZUZの主な事業は20代の若手に特化したキャリア支援と新卒、既卒の就職サポート。グループにITスクール運営の「㈱ウズウズカレッジ」、ITエンジニアに特化した「㈱システムエンジニアリングサービス」などがある。
UZUZによると「旭川オフィスはスタッフ数28名。首都圏企業のIT開発案件やデジタルマーケティング業務をリモートで行っている。また道北エリアの若者に向けたキャリアカウンセリング機能も持ち〝旭川に住みながら東京水準の最先端の仕事をする〟を実現し、UIJターン採用の受け皿となっている」。また、岡本代表は旭川市出身。「米国アラバマ大学卒業後、新卒入社した会社での挫折経験を原点に、2012年にUZUZを設立した」(UZUZ)
9月までに合意
代表が旭川出身で旭川にオフィスを構え、グループ企業がITスクールを運営。旭川とスクール(専門学校)につながりがあり、そして岡本代表は早くから「旭川でIT教育の専門学校を開く」との思いを持っていたようだ。
同窓の知人が明成高校の教師をしていた縁で宝田学園の五十嵐敦子理事長、五十嵐暁郎顧問とパイプができた。五十嵐理事長・顧問によると、医療秘書専門学校の運営を岡本代表にバトンタッチすることを決断するまでの経緯は次のようである。
─2年前(24年)の9月ごろ、東京のIT企業の代表が専門学校を開設するための建物を探しているとの話を聞いた。高校と違い補助金のない専門学校の経営は厳しく、新たに専門学校開設を志すとは奇特な企業人だなと感じた。うち(宝田学園)に施設はあるから入ってもらうのも一つの手かなと思い東京で会い、その後東京や旭川で何度か会って学校法人のこと、専門学校の経営のことなどを話し合った。
1科だけの医療秘書専門学校はギリギリの経営で、ITを加えた2学科にして岡本さんに入ってもらうのはどうかとも考え話を詰めている過程で、岡本さんが医療秘書専門学校を引き受けましょうということになった。
UZUZ社のことも可能な範囲で調べさせてもらったが、優良企業などとの取引があり若いがしっかりした企業で、お任せできると判断した─
昨年9月までに双方、合意に達して、9月末に設置者変更認可申請書を提出。その後、在学生、入学希望者への設置者変更の説明、教職員への説明。11月19日に文科省の大学設置・学校法人審議会から答申を受け、正式に学校法人UZUZへの設置者変更がが認められ、そして師走に冒頭の学校法人登記となった。
新しい学校法人の運営で再スタートするのは4月1日から。柿崎校長をはじめ現在のスタッフは引き続き在籍し、UZUZのスタッフ数名も加わり現在、新体制の準備を進めている。
教育による再興
26年度は現在の校名のままだが、次年度27年度からはIT・AIビジネス科を新たに立ち上げ校名を「旭川IT・医療キャリア専門学校」と変更する予定だ。
岡本代表に文書で「専門学校経営に乗り出す狙いは何か」と聞いた。「故郷・旭川への恩返し、教育の再興」との答えが返ってきた。
岡本氏のメッセージをほぼ忠実に紹介するとこうだ。
「最大の理由は、故郷・旭川への恩返しと、教育による地域の再興です。 私自身、旭川で生まれ育ちましたが、帰省するたびにシャッターが降りた店が増え、街から若者の姿が減っていく現実に寂しさと危機感を抱いていました。『自分が愛する地元のために、何かできることはないか?』。そう考えた時、辿り着いた答えが教育でした。街を元気にするには、若者が定着し、希望を持って働ける環境が必要です。 実は、私の子供にも故郷である旭川をイメージして「あさひ」と名付けるほど、この街には愛着があります。
また、実現していきたいこととしては教育と社会(キャリア)の接続です。 これまでの日本の教育は、学校を卒業した瞬間にサポートが途切れがちで、教育内容と企業が求めるスキルにギャップがあることも課題でした。 私たちUZUZグループは、年間数千人の若者のキャリア支援を行う中で、社会で本当に通用するスキルと、若者がつまずくポイントを熟知しています。
宝田学園様が半世紀かけて築き上げた信頼と教育の土台に、UZUZが持つIT・DX教育ノウハウと就職支援力を融合させることで、入学した学生が〝卒業時には即戦力として、希望するキャリアを確実に掴める学校へと進化させたい〟と考えています。
そのために『校内オフィス構想』を実現します。 これは、学校内にUZUグループの企業が入居し、学生が授業としてだけでなく、仕事として実務に携われる仕組みです」
若者を定着させる
旭川宝田学園は、1947(昭和22)年に「旭川タイピスト養成所」を運営する法人として開設され80年近い歴史を持つ。タイピスト養成所は、タイピスト学校、旭川女子商業高等学校と改称・改編。1997年には、旭川明成高等学校を開設している。
医療秘書専門学校を譲渡したことで、旭川明成、わかば幼稚園、めいほう幼稚園の3施設の運営となった。五十嵐理事長と五十嵐顧問は「高校もいま転換期を迎えている。宝田学園は明成高校の経営に集中していきたいとの考えもあって今回の譲渡決断となった。
専門学校の卒業生の大半は地元に残り就職する。専門学校がなければ、若い人はさらに減り過疎高齢化に拍車がかかる。岡本代表は〝若者を旭川に定着させたい〟との強い思いを持っている。それが実現するように私たちはサポートし応援していきたい」と、再出発する旭川医療秘書専門学校の今後に期待をかけている。

